年金改革法案通過

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  • 国別労働トピック:2004年9月

法案提出より2年7カ月余りを経て、ついに年金改革法案が下院を通過した。反対派の議事妨害戦術のため11時間にも及んだ審議の後、政府に対する信任投票を経て、29日午前1時過ぎ、賛成288、反対119での法案可決であった。

改革の要点は、次の3点である。1.2008年より、年功年金の受給年齢を57歳から60歳に引き上げる(保険料納付期間は35年間)。2.2007年12月31日までに関しては、年金受給開始を先延ばしにする民間企業の従属労働者(被用者)に、税控除前給与総額の32.7%の手当をつける。3.従属労働者は、6カ月以内に、退職手当の積立金をそのまま保持するか、補完的社会保障基金に充てるかのどちらかを選択しなければならない。

今回の年金改革法が実施されることにより、財政効果としては、2012年から2018年の間に8兆8000億ユーロの支出(国内総生産の0.7%に相当)が抑えられると推計されている。

改革の時期は2つに分けられる。第1段階である2007年までには、退職手当とボーナスの一部に関して黙示の合意のメカニズムが採用され、とくに申告をしなければ、これらは補完的社会保障基金へ積み立てられることになる。年功年金の受給要件に関しては、現行法上の規定が維持される(受給年齢57歳で社会保険料納付期間35年、または、社会保険料納付期間38年の場合には年齢要件なし)。ただし、この要件を満たしても、労働者が就労継続を選択する場合には、INPS(全国社会保障機関)に納付すべき保険料は免除される。これに加えて、上記2.の手当が給与に付加されるので、総体的にみれば、年金受給を選択するよりも就労を継続した方が有利になりうるシステムである(INPDAP(全国公務員社会保障機関)は、手取り年収が1万8000ユーロの労働者に関しては、45.5%、すなわち、8000ユーロ強が加算されるとシミュレーションしている)。ただし、保険料納付を怠っていた場合(就労を継続しても年金額が増えない)や、年金を受給しつつ、重複受給禁止規定にかからない労働活動を遂行する場合(手当を受ける場合より有利)には、この限りでない。

第2段階である2008年以降は、年功年金の受給年齢が順次引き上げられる。すなわち、2008年1月1日以降は60歳、2010年以降は61歳、2013年以降は62歳である。女性については、引き続き57歳で年金受給が可能であるが、その分受給額が若干低くなる(納付した保険料を元に受給額が算定されるため)。

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