失業率、実質的には横ばい

カテゴリー:雇用・失業問題統計

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  • 国別労働トピック:2004年7月

ドイツ連邦雇用機関が6月8日に発表した5月の失業率は10.3%で、前月より0.4ポイント減少した。ドイツでは毎月の失業率・失業者数を季節調整を施さずに公表しており、気候のよい5月には数値が減少することが多い。しかし、季節調整後の失業者数は前月比で9000人増加するなど、雇用情勢が好転したとは言えない。連邦雇用機関のフランク・J・ヴァイゼ長官は「経済成長力は、労働市場に刺激を与えるには依然として弱い」とコメントしている。

5月の失業者数(季節調整前)は429万3000人で、前月比では15万200人の減少。前年同月と比べても、5万人減っている。しかし、前年のデータと比較する場合、2004年年初からの統計方法の見直しにより、今年のデータが低くカウントされていることに留意する必要がある。たとえば、失業者のうち短期の訓練措置(職業適性を高め、職業養成訓練へ向けての知識・能力をつけることを目的としている)を受けている人は、失業者数に含まれなくなった。連邦雇用機関は、このような要素を勘案し同条件で前年同月と比較すると、失業者は2万9300人増加した計算になると公表している。

東地域の失業率が西地域の2倍以上という傾向にも目立った変化がない。西地域が8.2%(前月比0.3%減)なのに対し、東地域では18.2%(前月比0.5%)となっている。

今後の雇用情勢について、与党社民党(SPD)の労働市場政策担当者は、ZDF(ドイツ第2テレビ)の放送で、機械受注残高の増加などで景気回復が軌道に乗り、今年秋から、「遅くとも来年」には、雇用に関する指標が目立って改善するとの見方を示した。ドイツでは景気回復が予想されながら、その見通しが時間を経ると下方修正されるのが最近のパターンで、6大研究所の春の予測では、年初に出した成長率見通し1.7%(年率)を1.5%に落としている。輸出が順調に回復しているが、内需の回復が弱いという傾向が続いている。

一方、ドイツ政府の有識者委員会の専門家に任命されているP・ボフィンガー氏が、失業扶助(失業手当支給期間経過後に支給)と社会扶助(生活保護給付に相当)の統合による失業手当Ⅱ導入後、「30万~40万人の社会扶助対象者が新たに失業者にカウントされる」と独ビルト紙で指摘したことが、今後の雇用についての論議に波紋を投げかけている。労働市場改革を目的とした「ハルツ第4法」の施策である失業手当Ⅱの導入は、05年1月に予定されており、それ以降、これまでの社会扶助受給者のうち「就労可能な者」と認められた場合は、失業手当Ⅱの対象となるからだ。冬季は季節的要因で失業者が増えるため、この指摘どおりになれば、失業者数が、ドイツ統一後記録したことのない500万人の大台に乗る可能性も考えられる。

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