民間ブルーカラー労働者の離職者支援制度創設に労使が合意

カテゴリー:雇用・失業問題労使関係

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  • 国別労働トピック:2004年5月

スウェーデン企業連盟とスウェーデン労働組合総連合(LO)は2004年2月24日、3年間の協議の後、民間ブルーカラー労働者が離職した際の再就職などを支援するための「調整」協約に合意した。同制度は2004年9月1日に開始され、約95万人の労働者が対象になる。LOは、3月末までに締結される各産業部門の新協約締結の前提として「調整」協約の締結を求めていた。

「調整」協約は、LOに所属する中高年組合員が解雇通知を受けた際の金銭支援(AGB)を定めている。支援を受けることができるのは40歳以上64歳11カ月の労働者で、AGB受給のためには企業と労組が共同で申請する必要がある。受給資格を得るためには、解雇手当を支払うAGB保険に加入している企業(複数企業の場合も可)に引き続き5年以上雇用されている必要がある。AGBは、1965年に発足し、何度か制度内容が変更されてきたが、新AGBは金銭支援をより拡大している。例えば、40歳で解雇された労働者に対するAGB制度からの解雇手当は2万5000クローネ(注1)が上限となる。このAGB制度の解雇手当は、法律により使用者が負担する解雇手当と、当該産業部門の協約で定められた解雇手当に加算される。AGBを運営するのは、LOとスウェーデン企業連盟の前身であるSAFが設立した財団である。

新制度では、AGB保険に加入している企業(複数企業の場合も可)に引き続き1年以上雇用されている全ての労働者は、「調整支援(adjustment support)」を受けることができる。調整支援は、離職者が新たな仕事に就くための調整過程を容易にするためのもので、教育、訓練、再就職支援、企業の創業のほか、当該労使が予め合意したサービスの形をとる。

ただし、例外的に同制度の対象とならないのは、最後に雇用された労働者が最初に解雇される雇用保障法の先任権に関する規定が守られなかったとして使用者と法廷で争っている労働者である。AGB保険制度からの全ての支援は、このような労働者が紛争を終え、離職した時点に開始する。

使用者は、AGB保険制度に賃金支払額に基づき保険料を拠出する。現在、賃金の0.03%の保険料は2009年までに0.3%へと段階的に引き上げられる。新「調整」協約の費用は年約7億クローネと予想される。AGB保険は60~70億クローネの資金を持つため、2009年までは、給与の0.3%にあたる保険料からさらに引き上げなくてもよいと考えられている。

現在、顕在失業率は約6%に上昇している。この失業率に含まれている失業者の他に、政府が運営、あるいは補助金を与えている公共事業、職業訓練事業に参加している労働者が他国よりも多いことがスウェーデンの特徴だが、こうした積極的労働市場政策は縮減されているため、民間の労使が解雇者向けサービスを拡充する必要が生じている。

工業部門のホワイトカラー労働者は1997年に、中央政府職員は1990年にそれぞれ同様な調整協約を使用者組織と締結している。市町村政府部門では、調整協約を締結していないが、遅くとも2005年には労使が交渉を始めると予想される。

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