各産業で対決色の濃い労使交渉始まる
多くの産業で前回、前々回の3年協約を締結した1998年、2001年に4%前後であった失業率は、現在は6%近くに上昇している。賃上げ余地について、労使は全く異なる見解を持ち、賃上げ幅について労使が対立している。
この見解の相違は、主要な労使交渉の場を中央にすべきか、あるいは、事業所単位にすべきかという立場の違いにも反映されている。各産業部門の使用者と労組はそれぞれ、全国組織の指導の下に固く結束して交渉に当たっている。
労使交渉の焦点
一般に今回の労使交渉では、使用者側は各企業の賃金支払能力に応じて賃金を設定できるように事業所単位の協約を望んでいる。一方、労組は協約対象の労働者のなかで最も低い賃金を得ている労働者の待遇改善を重視しつつ、各産業部門で全国規模の協約締結を目指している。
多くの使用者団体が、他の産業における協約に対してパターン形成してほしいと望んでいるのは、エンジニアリング産業の協約である。1月中旬、同産業の使用者側は労組に対し、実質0%の賃上げ回答を行った。エンジニアリング産業使用者側は、主要な交渉の場は事業所単位とすべきで、事業所で合意に至らない場合にかぎり、労使が中央交渉で定めた上記の賃上げの数字(実質0%)を適用すべきだと主張している。
LOは労働安全衛生についての協約を要求
ブルーカラー労組連合であるスウェーデン労働組合総同盟(LO)は賃金交渉のなかで、労働安全衛生について労働者の発言機会や決定権の拡充を求めている。協約交渉のなかでLOが労働安全衛生に関する共同決定権を主要な要求として真摯に交渉するのは初めてである。LOが2004年1月26日に行った要求は次の内容を含む。
- 各産業部門の全国協約で、労働安全衛生に寄与する教育、訓練についての規則を定め、業務における人員配置決定について労働者の意見がより反映されるように規定する。
- 労働環境とリハビリに関する体系的な取り決めを事業所単位の合意事項に盛り込むことを全国規模の協約に規定する。
- 各産業部門では、労働安全衛生関連法に定められた責務を実際にどのように果たしていくかについて労使の代表が検討し、合意する。
- 各産業部門で新協約の締結が予定される2004年4月1日までの期間に、使用者側の交渉主体の加盟企業すべてを対象にした、質の高い職業衛生サービスについて特別の協約
を締結しなければならない。
使用者側は、LOの労働安全衛生に関する要求を費用がかかりすぎるとして直ちに拒否した。一方、LOは、労働安全衛生について労使による共同決定が十分に行われていないために疾病が多く発生し、費用がかかっていると反論している。
部門別の交渉
各部門の労使交渉の状況は次のようになっている。
地方公共団体の現業労働者
進行中の協約交渉の前哨戦とも位置づけられるのは、地方公共団体のブルーカラー労組(Kommunal)がすでに2003年5月に締結した2年協約である。この協約が定める2004年の賃上げは2.45%である。
この2.45%の賃上げは、エンジニアリング部門の使用者の回答を考慮すると、それほど低い賃上げ幅ではない。この2.45%は、エンジニアリング部門の実質0%の賃上げ回答と同部門労組の3.5%の賃上げ要求のほぼ中間に位置している。このため、エンジニアリング産業の使用者側は、地方公共団体部門の賃上げ幅2.45%を参考にしながら、0%回答をした可能性が高い。
エンジニアリング
エンジニアリング産業の使用者団体は、同産業部門のブルーカラー労組Metall、ホワイトカラー労組SIF、専門職労組CFに対して、月250クローネの賃上げを保証し、向こう3年間に合計約3%の賃上げを提示した。
毎年約3.5%の賃上げ要求をしていた労組の要求と比較すると、年平均1%の賃上げは、かなり低い。さらに使用者側は、土曜などに使用者が仕事の予定を自由に設定できる時間を年に50時間追加する権利を要求した。50時間の時間外手当は年1%の賃金に相当しているため、使用者側の回答は実質的に0%(=1%-1%)の賃上げを意味する。労組は、使用者の回答を非常に不満だとしている。
小売
小売業界のLO傘下のブルーカラー労組(Handels)は1年協約を求めており、3.6%の賃上げ、さらに各個人について、月650クローネの賃上げ保証(協約最低賃金対象者は850クローネの賃上げ保証)を要求している。協約最低賃金では月1万3000クローネの所得にすぎず、19歳から22歳の若者が生活するには苦しい。LOは、若者や女性労働者の賃金の底上げを図っている。同様に、ホワイトカラー労組である商業俸給労働者組合(HTF)は3.6%の賃上げ、さらに各個人について月450クローネ(協約最低賃金対象者は500クローネの賃上げ保証)を要求している。
使用者側(Svenks Handel)は3年協約締結を求め、協約最低賃金、夜間労働の賃金増額などは行わない方針である。小売部門では、多くの店員が低い給与水準で働いているため、協約最低賃金や夜間労働の賃金は最も重要な争点である。
使用者側はまた、すべての賃金交渉を事業所単位で実施し、企業ごとに賃上げ幅を設定するように主張する。この点で、エンジニアリング部門の使用者組織と同じ方針を貫いている。HTFは、賃金を事業所単位で取り決めることについては容認するが、協約最低賃金を上げることができない場合には全国規模で賃上げ幅を決めるように望んでいる。
電気技師
電気技師の労組(SEF)は、職場におけるスケジュール設定などについて労組が決定する権利を拡大するように要求している。特に過密なスケジュールによるストレスやけがを減少させることを重要と考えている。
銀行
銀行部門では、労働者各個人の賃上げ幅の保証を求めた労組に対して使用者側は難色を示している。また、3年協約の2年経過後に3年目の協約を再交渉できるとする条項をつけることについても使用者は拒否している。
2004年4月 スウェーデンの記事一覧
- 各産業で対決色の濃い労使交渉始まる
- 労働市場庁の職安改革
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