失業問題の深刻化
―レイオフが相次ぎ、失業者増加に警告

カテゴリー:雇用・失業問題

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  • 国別労働トピック:2004年4月

東南アジアの各国で経済危機の克服が見られるが、インドネシアの雇用情勢はまだその段階には達していないようだ。民間会社の人員削減政策が相次いで発表され、政府や経営者団体は2004年の失業者数を100万~250万人増と見込んでいる。

2003年の解雇者数、前年比24%増加

失業問題が深刻化する中、2003年の解雇者数が2004年1月12日に発表され、その数は2002年から24%増加し、15万4450人に達した。一方最低必要生計費(KHM)に対する最低賃金の割合は、88.53%にとどまり、依然として最低賃金レベルの支払を受け取っても最低限必要となる生活水準を確保できない問題は解決していないようである。

2004年の失業者は100万~250万人増

ヤコブ労働・移住相は2004年1月上旬、今年度の失業者数が4500万人を超え、失業者数が約250万人増加する見通しを明らかにした。同時期に、インドネシア経営協会(Apindo)のソフィヤン会長も、失業者が100万人以上増加することを警告しており、2004年も労働市場にとって厳しい情勢であることが予想される。

Apindoのソフィヤン会長は、特に林業部門で50万~60万人、繊維産業で10万~15万人の失業者が見込まれると発表し、同セクターへの支援が必要だと述べている。

林業分野では、自然林の減少から政府が伐採割り当て量を引き下げていることから、工業閉鎖を行う企業が増加すると見られている。また、繊維分野では、2005年1月からアメリカ、カナダ、EU向けの繊維製品輸出割当が撤廃されることや、中国からの安価な繊維製品が大量に国内に流入していることから、失業者の増加が予想されている。

一方、地方別でも問題は深刻化している。ジャカルタでは2003年でホームレスの数が4万7500人(8500世帯)を超え、都市での就職難と貧困問題がまだ大きな問題であることが浮き彫りにされた。

バタム島では、2003年12月末時点での失業者数が1万8500人に上り、失業者の増加が労働局の負担になっていることを同局雇用機会課課長が明らかにしている。

また西ジャワだけでも、繊維部門の失業者は5万人以上に上ると見られている。インドネシア繊維協会(API)の西ジャワ地区会長であるリリー女史は、上記のような理由から2004年の繊維生産は前年比で約20%程度落ち込み、それが従業員解雇につながると予想しているという。

民間会社の解雇、早期退職制度も

多国籍靴製造メーカーのリーボック社の生産を請け負っている、スターウィン・インドネシア社は、タンゲランの工場を2月2日に正式に閉鎖し、全従業員3700人が解雇される見通しだ。同社は2003年12月から従業員の長期的なストが続いており、そのため商品の供給が滞り、供給先からの信頼を失ったことが閉鎖の1つの原因と発表している。同社は2003年11月からラマダン明け手当ての支給を求めたデモや、ストがたびたび起こっており、それらが労使関係の不和を生んだと見られている。

現在同社の労組代表は、解雇者に対する解雇手当の支給を求め、福祉正義党(PKS)傘下のバンテン福祉労働者連合に支援を求めたということだ。

また、アメリカに本社を置く石油会社カルテックス・パシフィック・インドネシアは、2004年1月までで募集していた早期退職制度の対象者が1130人に上ったことを明らかにした。同社は全従業員6000名を対象に、早期退職の意向をアンケートで質問し、退職を希望すると答えた従業員約1130人を経営側で了承したという。

さらに、アチェにある肥料メーカー、アセアン・アチェ・ファーティライザー(AAF)でも、肥料製造に必要なガスの供給が停止し、工場の操業停止が続いたため、契約社員120名を1月7日に解雇したことを発表している。

日系企業では、松下電器産業が、インドネシアを含む東南アジアの生産・販売子会社の約4割を集約することを1月初頭に発表しており、同社の系列10社の全従業員2万4000人の雇用に影響がある可能性は高い。

政府の雇用対策

このような厳しい雇用情勢に対して、ヤコブ大臣は、100万人の海外出稼ぎ労働者の派遣(主に中東、アジア地域)や、農業省、観光省などと共同で雇用創出政策を行うと発表している。

また、新しい失業者の多くが、若年者の教育程度が比較的低い人達であることから、今年行われる大統領選挙の際の政治的な治安を悪化しかねないとして警戒を強めていることも明らかにした。

とはいえ、海外出稼ぎと農業分野、観光分野でどこまで雇用創出を図れるのか、また海外出稼ぎに関しては、まだまだ労働者保護の観点から不十分な点も多く(詳細は海外労働情報2003年11月2004年1月2月3月参照)、簡単に出稼ぎを奨励できる段階ではないとの意見も出されている。さらに、1月30日には台湾政府がインドネシア人労働者の受け入れを停止することを明らかにしており、出稼ぎ情勢は難航している。

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