失業率が22年ぶりの低水準に
―2003年10月の失業率は5.6%
10月の失業率は5.6%
オーストラリア統計局は2003年11月6日に、失業率がこの22年間で最も低くなったことを明らかにした。それによると2003年10月の失業率は5.6%(季節調整済み数値)であり、過去において失業率がこれを下回ったのは1981年6月の5.4%であった(その後89年には失業率が5.6%に達した)。特に、労働力参加率が上昇したにもかかわらず、失業率が低下している点が注目される。雇用者数は7万人程度増加し、雇用者総数は961万6800人となった。オーストラリア経済は急速に成長しており、オーストラリア連銀は金利引き上げの必要性を認めている。
このように経済に関する楽観的な展望が示される一方で、若干の問題も指摘されている。すなわち、第1に豪ドルの対米ドル価値が上昇しており、このことは輸出競争力を低下させることになる。第2に金利引き上げは国内の経済活動を抑制する可能性がある。第3に、失業率の低下は労働者の交渉力を強め、賃金インフレを招きかねないと指摘されている。特に、建設業や一部の製造業では熟練工が不足しているため、賃金インフレが予想されている。これを証明するように、2003年11月に公表された2003年9月四半期の賃金コスト指標は1%上昇し、賃金の大幅引き上げの兆しを示すものではないかと考えられている。
コステロ財務省長官は完全雇用が間近いと評価し、完全雇用達成と賃金インフレの危険抑制のためにはさらなる労使関係改革と社会保障制度改革が求められると述べている。
隠れた失業問題
これに対し、オーストラリア社会事業評議会(ACOSS)は2003年11月に「オーストラリアの隠れた失業」と題する報告書を公表した。そのなかでACOSSは、先の統計局による失業率がひどく誇張されており、非自発的失業の実質程度は2002年9月時点で12.9%であると主張している。ACOSSは、統計局の統計手法が国際比較の点では有効であるものの、非自発的失業やそれに伴う貧困の程度の実際を測定するものではないとしている。例えば、統計局の手法では、71万6000人が公式失業統計から除外されている。つまり、この71万6000人は週当たり1時間しか働いていないのだが、統計的には雇用者に分類されている。さらに、いわゆる求職意欲を失った「挫折求職者」も公式統計からは除外されている。つまり失業者と分類されるためには、求職活動を行っているか、現に行える者でなければならない。求職活動を行っていることの証明は、求職のために企業と接触を持った旨を当該使用者が記入する書類で行われる。
すなわち、ACOSSによる報告書の要旨は、現在の失業率は虚構であり、失業問題の実際の程度を控えめに表現しているというものである。
2004年2月 オーストラリアの記事一覧
- 失業率が22年ぶりの低水準に―2003年10月の失業率は5.6%
- ACTU、2004年に週26.6豪ドルの最低賃金引き上げ要求を表明
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