外国人労働者をめぐる最近の動き

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  • 国別労働トピック:2004年12月

台湾での外国人労働者の導入は、1990年に建設業における人手不足解消の目的で単純労働者の受け入れとしてスタートしている。近年政府は、新規に拡大しつつある産業であるハイテク産業での人材確保に政策を転換している。現在、受け入れているのは、インドネシア、マレーシア、フィリピン、タイ、ベトナムとモンゴルの合計6カ国である。モンゴルについては、今年5月から受け入れている。(海外労働情報2004年7月参照

今年9月末の時点で、台湾の製造業者が雇用している外国人労働者は30万7477人であり、その約半数はインドネシア、フィリピン、タイ、ベトナムからの労働者が占めている。それ以外の業種については、介護労働者、家事労働者、船員として働いている。

今年7月に4.62%だった台湾の失業率は、8月に入り4.67%に上昇した。台湾で働く外国人労働者の数を減少させるために、行政院労工処(CLA)は最近、割当人数の適用や他の新規採用制限など、労働力の受入れを制限する措置を強化した。

そういった中で、失踪外国人の問題、ハイテク産業をめぐる規制緩和、外国人労働者の配偶者の問題に焦点をあてる。

1.失踪外国人労働者

台湾では長年に渡り、失踪外国人労働者が深刻な問題となっている。最近の統計資料によれば、失踪外国人労働者を送り出している比率が高い国として、タイが1.6%、フィリピンが2.5%、ベトナムが9.77%、インドネシアが11.11%となっている。そのうち、ベトナムとインドネシアの失踪労働者数はそれぞれ約7900人、3700人である。

インドネシアとベトナムからの失踪外国人労働者の比率が高い点を考慮し、大量の失踪労働者とインドネシア人的資源局の彼らに対する不十分な管理を理由に、台湾は、2002年8月からインドネシア人労働者の受入れを凍結しているが、その状況は未だに続いている。

その一方で、ベトナム人労働者の失踪率がここ6カ月に渡って上昇しているため、ベトナム及び台湾政府間で、解決可能な手段を検討することが急務となっている。CLAでは、ベトナムからの失踪労働者の数が今後も増え続けるようであれば、インドネシア人労働者と同様、ベトナム人労働者の受入れについても凍結せざるを得ないとしている。

CLAが、インドネシア人労働者の受入れを凍結して以降は、最も多くの失踪労働者を送り出している国はベトナムとなっている。ベトナム人の失踪労働者の数は1カ月当たり約500人に達し、その累積人数は今年5月の5900人から9月には7900人に増加している。

CLAではすでに今年の5月から、ベトナム人の漁船労働者の受入れを禁じているが、家事労働者又は介護労働者はその対象に含まれていないのが現状である。ベトナム人介護労働者は現在、台湾の介護産業従事者の50%に達していることから、今後受け入れを凍結した場合、台湾国内の介護産業に深刻な影響を及ぼす恐れがある。

多くのベトナム人労働者が失踪する理由は、介護が労働集約的な労働だからである。また、労働者の失踪を可能にし、避難場所を提供する台湾市民が背後におり、その密接な関係があることも指摘されている。しかし、国際労働者団体(NGO)は、外国人労働者が失踪する理由は、労働者が雇用者が提供する労働条件に満足していないためであると考えている。台湾人労働者の場合、労働条件に満足できなければ退職するだけであり、それを「失踪」とみなす人はいないはずである。

現行規則によれば、政府からの許可なしに、外国人労働者が転職することは禁じられており、家事労働者及び介護労働者は労働基準法の対象からも除外されている。

2.規制緩和

台湾では、新たな投資を促すために、製造業分野での外国人労働者の受入れに関する規制を緩和する予定である。CLAの今回の決定は、鉄鋼とコンクリート価格の高騰に苦しむ製造業者からの再三に渡る規制緩和要求を受けてのことである。

従来は2億新台湾ドル以上となっていたが、新たな規則によれば、5000万新台湾ドル以上の新たな投資を行う企業については、外国人労働者の新規採用が認められる。従って、経済全般も視野に入れた中小企業の開発促進を目的とする政府の新たな措置によって、中小規模の製造業者は多くの利益を得ることになる。

一方、外国人労働者の急増を回避するために、CLAは、ハイテク企業を対象に、投資額の下限を2倍に引上げて10億新台湾ドルにすることも予定している。

3.外国人配偶者に対する職業紹介サービス

外国人女性配偶者の増加と彼らの生活改善を図るために、CLAは最近、台湾市民と結婚した外国人女性配偶者に関する求職支援策を模索している。

2003年4月、立法院(国会)は職業紹介サービス法改正案を可決したが、その内容は、永住権を取得すれば、外国人配偶者の台湾での就労を認めるというものである。同改正案の可決により、不法就労に従事し、逮捕に怯えつつ生活していた外国人配偶者の就労権に関連する紛争が大幅に減少している。

当初計画案によれば、CLAが外国人配偶者に今後提供する支援には、求人・求職照会、職業訓練、採用前訓練、職業技術・作業能率の向上が含まれることになる。

職業紹介サービス法改正案が可決された後、直ちに、就職紹介サービスと職業訓練を外国人配偶者に提供することは、中央と地方政府による措置の一歩先を行くものといえる。

CLAは、台湾全域に存在する公的職業紹介所又は職業訓練センターで、職業訓練を受けることを申請する永住外国人に対し、金融助成金を提供することも計画している。

政府は更に、中小企業の起業を考えている外国人配偶者に対し、低金利の融資又は補助金を提供することも計画している。それに加えて、中・低所得家庭に属する者とみなされ、失業状態が12週以上に及んでいる外国人配偶者については、6カ月の金融助成金を提供する予定である。

CLAでは、そのような計画を実行すれば、外国人配偶者が地域社会に溶け込みやすくなり、台湾が高度な多文化社会に脱皮することにつながると考えている。

しかし、外国人配偶者が外部で働くことにより、家族内の高齢者と幼児に対する世話の問題が浮上してくる。すなわち、外国人配偶者の中には、家族の経済状態を改善させるためにフルタイムで働く必要があると考えている者もあり、子供と高齢者が家庭にとり残される状態が大きな問題となる場合が少なくない。

外国人配偶者支援グループは政府に対し、永住権を取得すれば、外国人配偶者が台湾で就労できるとする改正後の職業紹介サービス法について、より多くの情報を公開するよう要請している。

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