NHLのロックアウト長期化/今シーズンの開幕危ぶまれる

カテゴリー:労使関係労働条件・就業環境

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  • 国別労働トピック:2004年12月

北米プロアイスホッケーリーグ(NHL)の新シーズン以降の労使協定をめぐる交渉で、オーナー側と選手会側の歩み寄りがみられず、今シーズンの開幕が危ぶまれている。新協定締結にあたり、赤字経営脱却を目指すオーナー側は、「サラリーキャップ制」(全選手の年俸に上限を定める制度)の導入などを提示。これを拒否した選手会側は、サラリーキャップ制の代わりに贅沢税(年俸総額が一定額を超えたチームへの課徴金制度)の導入、赤字チームへの利益再分配、選手年俸の一律5%カットなどの4項目を逆提案したが、コミッショナーは、「同じ言語で話しているとは思えない」として選手会側の要求を受け入れず、交渉が決裂。労使協定失効後の9月16日にオーナー側は、ロックアウト(施設封鎖)に突入し、選手にレイオフを通告した。この結果、10月13日に予定されていた今シーズンの開幕は延期。妥結はおろか労使交渉再開の目処も立たない状態が現在も続いている。

さらに、11月3日には、NHLのベットマン・コミッショナーが謝罪声明を出し、来年2月にアトランタで開催予定だったオールスター戦の中止を発表。11月29日時点で、ロックアウト突入後72日が経過し、既に627試合が中止となっている。双方の対立は長期化の様相を呈しており、今シーズン全体が中止に追い込まれる声も濃厚になりつつある。NHLは、1994年の前回交渉でも、130日間のロックアウトを実施。468試合が中止になっている。

今回のオーナー側の提案は、全30チームの連結決算で、一昨季に3億ドル、過去10年で18億ドルにも膨らんだ累積赤字を、収益の75%を占める選手人件費を抑制することで解消したい意向を反映したもの。選手会側は、リーグ全体の増収を理由に強く反発している。

この流れで、選手約730人のうち、スター選手も含め、既に320人以上が、欧州や下部リーグに移籍した。だが、それ以外の約400人は、プレーの場を求めて、ロックアウトの解除を待っている状態だ。こうしたなか、スラッシャーズのベルキン・オーナーは、代替選手での開幕を示唆。同氏の発言が選手側の不信感を煽り、事態がさらに混乱したため、NHLはベルキン・オーナーに対し、25万ドルの罰金を科している。ロックアウトの長期化に伴いNHL選手会は11月26日、選手らへの失業保険の給付を決定。11月は1人当たり1万ドル、12月以降も継続して、上限1万ドルまでの補償金を支払う予定だ。

グッドナウ氏が1991年に選手会代表に就任して以来、選手の平均給与は400%もアップしており、1991-1992年に36.8万ドルであった平均給与は、2003-2004年には183万ドルにまで跳ね上がっている。今回のオーナー側の条件を受け入れた場合の平均給与は130万ドル程度に下がるが、プレーの場を失った選手たちの無記名投票を実施すれば、半数以上の選手がオーナー側の条件を呑みこむ見込みが高い、とメディアは報じている。

なお、昨季のNHL各チームの資産額は、2億8200万ドルのニューヨーク・レンジャーズを筆頭に、トロント、フィラデルフィア、ダラス、デトロイト、コロラド、ボストン、モントリオール、ロサンゼルス、シカゴの各チームがトップ10。昨季の経営状況は平均で3.2%アップしており、平均資産額は1億6330万ドルとなっている。

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