EU加盟と労働移動:ハンガリーとスロバキア

カテゴリー:雇用・失業問題外国人労働者

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  • 国別労働トピック:2004年11月

今年8月のハンガリーとスロバキアの失業率は、それぞれ5.9%と15.7%(EUROSTATデータ)。隣り合っていながら失業率には大きな格差がある。しかし5月のEU(欧州連合)加盟は、両国の労働市場に多かれ少なかれ影響を与えつつある。

以下では、ハンガリー、スロバキアにおける国境を越えた雇用、労働について、最近の動向をみる(注1)。

ハンガリー企業はスロバキアの人材に依存

東欧の中では比較的失業率の低いハンガリーだが、地方の労働市場では構造的な需給のミスマッチが生じている。企業が求める人材が国内で得られず、労働者を国外から採用せざるを得ないようになってきている。例えばスロバキアとの国境に位置するコマロムやエステルゴムでは、多くの新しい企業が操業を開始又は事業を拡張しているが、企業が求める熟練した肉体労働者が不足している。そのため、スロバキアから多くの労働者が国境を越えて、これらの企業に通勤している。

スズキのエステルゴム工場では2000年から、約500人のスロバキア人労働者が常勤で働いている。さらにこの工場は最近、100人をルーマニアから雇い入れた。同様の状況は、コマロムにあるノキアの携帯電話の生産工場でもみられる。ここでは約500人のスロバキア人労働者が働いている。同企業は来年生産を倍増し、現在働いている2千人に加えて、さらに千人の労働者を雇い入れる予定である。

5月のEU加盟後、ハンガリーではスロバキア人に対する労働許可の手続きが簡略化された。加盟前は許可されるまでに3カ月かかったものが数日ですむようになり、国外からの労働者の採用を容易にしている。

スロバキア国民の出稼ぎ希望

ハンガリーのコマロムと国境を隔てるスロバキアのコマルノ地方では、ハンガリー企業による雇用増の恩恵を受け、失業率が過去3カ月間で数%下がったという。

しかし国外労働を希望するスロバキア人のうちには、行き先としてハンガリーではなくドイツやオーストリアなど、より賃金の高い国での就労を望む者も多い。

5月1日以降、1050人のスロバキア国民が、EURES( European Job Mobility Portal)からEUで仕事を探す支援を受けてきた。労働事務所には2700人の国外労働希望者が登録されている。労働事務所においては、EURESのアドバイザーによる無料の相談、情報提供、就職支援が行われている。サービスのなかには求職者のオンラインデータベースもある。これにより求職者は労働事務所に行かなくても、インターネットを通じて履歴書を提出することができる。

しかし、求職者の関心と雇用機会はなかなか合致しない。求職者の多くはオーストリアやドイツでの、一時的又は季節労働を求めている。しかし求人の大部分はハンガリーをはじめチェコ、スロベニア、キプロスなど、スロバキアに対して労働市場規制を適用していない国からのものである。最も需要が高いのは建設労働者である。

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