景気回復で雇用情勢改善に期待
政府が9月に示した2004年の国内総生産(GDP)の実質成長率(実績見込み)は、2.5%。個人消費、企業設備投資の改善などによる景気の回復を見込んでいる。その一方、7月の失業率は9.8%を記録し、依然として厳しい雇用情勢が続いている。ラファラン首相は7月末に「今後数ヶ月にわたり、雇用のためにできる限りのことをする」と宣言したが、どう実践されていくのか注目されている。
失業率は6月から0.1ポイント改善したものの、依然として10%に迫る勢いで推移している。新規失業登録者数も増加を続け、5月に38万9200人、6月に39万3700人ほど増えた。全国商工業雇用協会(UNEDIC)は、雇用を創出するためにはGDPが1~1.2%程度拡大する必要があり、この数字が1.7~2.0%に達するまで失業は減少しないとしている。
景気の回復が雇用に反映されるまでにはタイムラグがある。企業は景気の回復が確認されてから少なくとも6カ月経過しなければ、採用を決断できない。経済成長が雇用情勢の改善として現れるのは、2004年下半期以降ということになる。企業が採用を決断しても、まずは有期雇用契約(CDD: un contrat a duree determine)が中心となるだろうが、その数もまだ期待されるような増加を見せていない。
こうした状況に対し、フランス企業運動(MEDEF)のセリエール会長は「今回の経済成長は十分とは言えず、企業経営者の投資も慎ましやかにならざるをえない。さらに、企業への課税圧力、労働規制、週35時間制、最低賃金の上昇などが、従業員採用の決定に不利に働いている」とし、経済成長が失業の減少につながるためには、政府が経済・社会政策を大きく変更する必要があるという見解を示している。
こうした中、ラファラン首相は7月27日、国会で「雇用のためにあらゆることを行う」と宣言した。それを受けて、政府は長期失業者などの雇用促進のための新たな制度を創設した。「活動の契約 (un contrat d'activite)」と名付けられたこのプログラムでは、対象者は人材育成のための個別支援を受けながら就労を行う。活動時間は週当たり26時間から35時間の間で、就労についてはその時間数に応じて最低賃金(SMIC)に基づき給与が支払われる。これにより将来の継続的な就業に結びつけることを目的としている。
その他にも、企業の事業活動と雇用創出を促進させるため、社会保険料及び税金の雇用主負担軽減が決定され、そのために10億ユーロ(注1)の支出が計上されている。
景気回復による税収の増大は、政府に雇用問題に取り組むために必要な資金をもたらした。構造的な失業問題を抱える中、政府はその財源を活かして実際に有効な施策を示し、一日も早く成果をあげることが求められている。
注
- 1ユーロ=136.86円(※みずほ銀行ウェブサイト
2004年10月4日現在)
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