持ち運び型医療保険制度、4月から実施
政府は2003年10月1日、転職・失職した場合でも医療保険の対象になり、同時に使用者が節税できる新制度を発表した。「持ち運び型医療福利スキーム(Portable Medical Benefits Scheme=PMBS)」と「移動型医療保険スキームTransferabel Medical Insurance Scheme=TMIS」がそれであり、いずれも2004年4月に実施される。
使用者は2つの制度から選択できるが、使用者側が通院・入院費を負担せずにすむPMBSの人気が高くなりそうだ。PMBSは従業員の医療保険加入を使用者が助成する制度で、使用者は毎月、従業員の中央積立口座(CPF)の医療保険口座へ決まった額(月給の1%以上)を拠出する。仮に当該従業員が解雇などの理由で退社しても、医療保険口座から保険料が納められているかぎり、保障の対象になる。
PMBS利用企業が税控除を受けるためには、2004年4月1日以前に雇用した邦人従業員の20%以上、それ以降に採用した邦人従業員全員を保険に加入させなくてはらない。
一方、TMISは既存の企業団体保険に追加する制度で、CPF制度とは連携しない。転職・解雇後も保険加入を継続できることがメリット。ただし、転職・退職後に保険料の残額をだれが払い込むかが明確になっていない。
TMIS利用企業が税控除を受けるためには、2004年4月1日までにローカル従業員の半数以上を保障対象にする必要がある。
PMBSかTMISのいずれかを導入した企業は、従来どおり総賃金の2%を上限に医療支出が税控除の対象になる。しかし制度を採用しない企業は、来年4月から税控除上限が総賃金の2%から1%へ引き下げられる。
それぞれの特徴は以下のとおり。
持ち運び型医療福利スキーム(Portable Medical Benefits Scheme=PMBS)
- 入院費用の支払い責任は従業員が負う。
- 使用者は従業員のCPF医療保険口座に追加拠出する(少なくとも月給の1%)。
- 従業員は追加拠出を利用して指定の入院費用保険に加入する。
- 従業員が失業した場合でも、保険料を納めているかぎり保険金を受け取れる。
移動型医療保険スキーム(Transferabel Medical Insurance Scheme=TMIS)
- 多くの企業が提供している団体加入保険が基礎。
- 従業員は転職しても保障の対象で、退職年齢(62歳)まで入院費用保険金が受け取れる。
- 従業員11人以上の企業が加入できる。
- 解雇(リトレンチメント)された従業員は、保険料が納められているかぎり、最長1年は保障の対象になる。
2004年1月 シンガポールの記事一覧
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