最近のストライキと解雇
―テキスマコ社とマスピオン社

カテゴリー:雇用・失業問題労使関係

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  • 国別労働トピック:2004年1月

(1)最近のストライキと解雇の現状

テキスマコ社

50億米ドルもの巨額の負債を抱え、経営危機に陥っている繊維・機械産業最大手のテキスマコ社において、2003年9月から同社の労働者が仕事を与えられないことを理由にストライキを行っている。9月23日には、同社労組であるFKPKT(組合員8000人)の代表約20人が、中央ジャワのスマランにある立法評議会の前でデモを行い、労働者の救済を訴えた。

代表らの説明によれば、2003年1~9月にテキスマコ社は2550人を一時解雇し、1540人を解雇した。一時解雇された従業員は基本給の75%を支給されているが、解雇された従業員は1カ月分の月給に相当する退職金を受け取ったのみである。現在雇用されている従業員も、給与の給付が遅れていることに不満を持っているという。

評議会の役員は、労組の代表と話し合い、評議会が仲介となってテキスマコ社と労組での話し合いを行うことを約束した。

その後10月1日には、労組代表らが全国3カ所で1000人規模のストライキを実施。ジャカルタではIBRA前にて約1000人、東ジャワのマランでは約2000人、中央ジャワのスマランでは3000人の従業員が、公的資金の投入による同社の救済と、解雇された労働者の保護を求めてデモを行った。

しかし、IBRAと中央政府は、同社の巨額の債務と経営状況から、公的資金による救済措置はリスクが高すぎると判断し、支援に踏み切れない状況にある。

マスピオン社

東ジャワのシドアジョにある家庭用品製造の大手マスピオン社の従業員約4000人が9月29日、同社の生産ラインの調整による3カ月間の休暇(無給)制度を撤回するよう求め、ストライキを行った。

同社は6000人の従業員を抱え、国内への家庭製品を生産している大手企業であるが、近年の不況の影響により、受注が減少していたため、6年以上勤務した従業員に、無給の3カ月休暇を与え、生産量の調整を図ろうとしていた。

同社と労組が締結した2003~2005年の労働協約のなかでは、生産調整のための休暇は起こりうる事態であり、その場合には従業員に対し補償が支払われると明記されている。そのため労組側は、今回の経営側の決定は労働協約違反であり、休暇中補償支払いを要求するため、工場内での座り込みストに至ったという。最終的には地元の警察200人が動員され、穏便にストは収まった。

(2)国営電力会社PLNにおける労使紛争と労働組合運動のあり方

国営電力会社PLNは鉱物資源エネルギー省の電力事業自由化の方針に基づき、同社の主要事業部門を分割、一部売却する方向で話が進んでいる。この動きに抗議して11月5日、同社労働組合員である、全国にある事業所の従業員48000人が、ストに入る構えを見せた。労組側の主張は、事業分割により発電部門が外資の手にわたり、結果として電力価格の高騰につながるなど、労働者にとっても、社会的にも悪影響があるとしている。このような労組の主張に対して、消費者保護基金など諸団体からは、労働組合の交渉項目ではないと批判している声もあがっている。

労働移住省労使関係総局の前総局長H.スワルト氏は、現在の労働組合運動のあり方に関して、「現在のインドネシアにおける労働組合運動がエリートによって主導されているものであって、労働者の本来の権利を代表する草の根的な運動によってなりたっているものではない」と指摘する。また、前労働移住相であるコスマス・バツバラ氏は、最近の鉱山会社KPC社におけるストを取り上げて、労働者が労働者としての権利主張の範囲を超えた要求事項を掲げてストを起こしていることに対して、労使相互の信頼関係(good will)を浸透させる必要性を説いている。

1998年の政治改革以来、それまで唯一認められた官製労組しか存在しなかった体制から一変して、次々と労組が結成され、乱立する傾向が続いている。75もの労組が労働移住省にナショナルセンターとして登録されている。このような事態をスワルト氏は、労働者にとっても経営者にとっても利益になっていないと指摘する。そしてバツバラ氏は、「(75の労組のうち)主要な労組ナショナルセンターは、全インドネシア労働組合連盟(KSPSI)とインドネシア労働者福祉組合の2つしかなく、しかもこの2大労組に組織化されている労働者が僅か200万人である。今後のインドネシアの労働組合を考えた場合、1つか2つの主要な労働組合連盟が、労働者の利害を代表して草の根的な活動を展開していく必要性がある」と訴えている。

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