政策不在の雇用:10%に迫る失業

カテゴリー:雇用・失業問題

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  • 国別労働トピック:2003年12月

失業が再びフランス人の最大関心事になった。発表された8月の失業統計にも明るさは見えない。労働人口の9.6%に相当する240万人以上がむなしく仕事を探している。今後数カ月のうちに10%の大台を超えることもまず間違いはあるまい。上半期にフランス経済は民間部門で6万人もの雇用を喪失したが、これは過去10年間で最も大きな数字になる。

そもそも最初の前提が誤りだった。大統領選前、シラク候補は年率3%の経済成長と力強い好景気が国庫へもたらす税収を当てにして、いくつもの公約を掲げた。すでに1年以上(2001年5月以降)、失業の増加が見られなかったことで、シラク候補はこの問題が二次的なものになったと評価していた。しかし、大統領選以降、成長率は低迷し続けている。2002年も1.2%という低い水準にとどまったが、今年はさらにその半分程度しか期待できそうもない。そのために、政府はパニックになっているかのようだ。

第1に、経済面での戦略にためらいが見られる。家計消費の回復を期待した所得減税や企業の投資を期待したわずかばかりの企業支援策も、腰の据わらない小手先の景気対策にしか映らない。政府は無策だとの批判を恐れ、必ずしも大きな効果が期待できない施策に資金をばらまいているとの印象が強い。しかもその財源を得るために予算赤字を拡大したことで、欧州パートナー国との間に極めて深刻な対立を引き起こすことになった。

次に社会的側面を見ると、政府は1年前に大幅に削減した助成金付き雇用の予算枠を、恥も外聞もなく、再び拡大することになった。また、消滅すればすでに失業で荒廃している地域をさらに追い込むことになるとして、政府は経営危機にあった大手重電・造船企業アルストムを救済するために31%の資本取得を決断したが、この部分的国有化もEU規則に反する措置だった。さらに、相次ぐ雇用調整計画に適切に対応できなかったことから、1年前に「ミスター経済改革」の異名をとった雇用対策委員長クロード・ビエ氏が早期辞任に追い込まれ、政府は行政面でも大きな痛手を負うことになった。

当然だが、労働団体はこのような雇用政策の不在に辛らつな批判を展開している。民主労働同盟(CFDT)は政府の「受け身の姿勢」を強く非難し、労働総同盟(CGT)は失業という火事を消し止めるために「じょうろ」に訴えようとしていると皮肉った。ついには、与党の議員でさえも公然と政府に対する懸念を口にした。

この圧力に対して、政府は全力を傾けている姿勢をアピールしたいと考えている。ラファラン首相はロンドンでブレア首相と会談した際に、欧州規模の景気回復策を主張した。また、雇用担当機関の間の協力を促進するために委員会を設置した。しかし、政府は実際のところ、強力な政策を選択することもなく、それを実施する手段も手に入れられずに、依然として何をすべきなのか測りかねている。

年頭にラファラン首相は、失業と戦うために閣僚一人ひとりが努力しなければならないと演説した。これはあるいは、首相のろうばいを要約した言葉だったのかもしれない。首相は今でも、米国の景気回復と欧州への波及効果を待つ以外に何も策を持っていないかのように見える。

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