若者の失業増加
労組の研究機関DIEESEが、サンパウロ首都圏で2003年6月に行った調査結果によると、労働市場の悪化は、特に18~24歳の年齢層に強い悪影響を与えている。ほとんど学歴に関係なくこの層に失業が増加しており、大学卒でも就職を保障することはできなくなっていることを数字が示している。職を求めている失業者に占める18~24歳層の割合は、2年前の2001年6月に25.3%であったものが、2003年6月は30.7%へ増加した。25~39歳層も同期に13.8%から16.7%へ増加したが、18~24歳層ほどの増加ではない。
民間の職業紹介会社コンパニア デ タレント社が、2002年にサンパウロ市の大手19社から委託された872人の見習い募集人選を行ったところ、18万人が入社試験に応募しており、この大手企業19社の求人は1人募集に206人の応募となる。2003年はさらに厳しい情勢となった。衛生用品工業のウニリベル社では、2003年度分として30人の見習いを募集するが、2003年8月19日までに、すでに1万8000人が応募した。2002年も30人の募集に2万人が応募している。2年前に開設した同社の履歴書管理部にはすでに10万通の履歴書が累積している。4輪車製造のフォードは2003年度見習い生の募集人員も決まっておらず、人選要綱も作っていないのに、2万3000通の履歴書が届いたと発表した。エービーエヌ・アムロ銀行は40人の見習い募集に2万6000人が応募した。
若年層の失業が増加している理由を、職業紹介所では、実務で長い経験を積んだエキスパートの失業が増加しているために、新卒はこれらの失業者と競争する必要が生じており、企業は実務経験を持っている失業者を、新卒を採用する水準給料で採用できるからだと分析している。サンパウロ市役所のマルシオ・ポシマン労働・開発局長によると、2002年の労働力ローテーションは、過去22年間で最低に下がった。これは、職を持っている労働者が絶対に解雇されないよう努力し、また一度就職したら決して解雇されないよう配慮している結果だと分析している。ブラジルでは就職が容易になると、働きながら職業紹介所に別の就職希望を申し込んでおき、有利な条件の職場が見つかると簡単に転職する習慣があるし、雇用側も、労働者の給料が高くなると簡単に解雇して安価な給料の労働者に入れ換える、いわゆるローテーションを行う。
労働市場の悪化とともに起こっている最近のもう1つの変化は、多くの企業が実習生名目で必要な労働力をまかなうようになったことである。採用に当たって、実習生名目なら、雇用に伴う分担金(年金・労災等の積立て)の納付が軽減される。いずれも8時間労働となっているために、労働市場専門家は、実習生を装った労働力確保手段になったと見ている。
2003年12月 ブラジルの記事一覧
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