2005年に公共部門で時短を試験的導入

カテゴリー:労働条件・就業環境勤労者生活・意識

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  • 国別労働トピック:2003年11月

社会民主党、環境党、旧共産党からなる研究会が、2005年1月より、多くの市町村と公的企業で労働時間短縮を実験的に試みることに合意した。時短が、健康や職場における男女平等にどのような影響を与えるかを科学的に調査する。実施方法の詳細については、今後、検討していく。この合意の下敷きとしては、2002年に3党が合意していた「より安全で、公平で、環境に配慮した」スウェーデンを目指した、野心的な121のプログラムがあった。

高齢化や欠勤者の増加で労働時間が短くなる傾向があるため、社会民主党は、時短を行うことに乗り気ではない。ところが時短は、環境党、旧共産党の従来からの大変重要な選挙公約となっている。社会民主党は、この件については譲歩することと引き換えに、2004年予算案への支持を取り付けたいと考えている。

一方、小売業界のLO傘下のブルーカラー労組(Handels)はむしろ長い労働時間を要求している。同労組組合員の54%(女性では64%、男性では29%)がパートタイムで働いており、パート従業員のうち、女性では24%、男性では36.5%がより長い時間働きたいと希望している。この希望は若い労働者ほど強い傾向がある。同労組は、すべての組合員が週20時間の労働をできるように希望しているが、1990年代に状況が悪化して以来、実現は困難だと判断している。

職場におけるストレス

職場におけるストレスが大きな問題になっているが、この問題について労働生活関連の研究所より、いくつかの研究成果が発表されている。それらのうち、2003年8月19日刊行の『スウェーデンにおける労働関連疾病の多発に関する研究』の執筆者たちは、1997年以来、疾病のなかで職場に関連した疾病が占める割合が増加しつつあると指摘、労働強度が高まったため、労働者が病気になることが多くなったとしている。経済状況が悪化すると、こうした労働者は初めに解雇され、最終的には、早めに引退することになってしまう。

別の研究は、長期病気欠勤と、職場でリストラないし事業再構築の心配があることとの間に強い相関があることを見いだしている。現在、医療保険、失業保険の費用が大変高くなっているが、その理由として、1990年代初頭の不況期が長かったことに加え、産業界や労働市場で、広範な構造転換や行政面での変化が起きたことを挙げている。

LOは、職場におけるストレス軽減を2004年次期交渉ラウンドで積極的に取り上げる予定だ。だが、LOの一般組合員は、職場における安全や健康問題をさほど重要だと考えていない。労組が取り上げるべき事項は何かを問われた時、LO組合員から選ばれた回答者たちは、最も多い38%が労働時間短縮を選び、29%が賃上げと答えた。明らかに、これらの回答者たちは時短とストレスとの関係を認識していない。あるいは、時短がストレス軽減のための最善策と考えているかのようである。ストレス軽減のためには、労働環境の整備を始め、仕事のスケジュール設定に労働者の意見が反映されることなど、様々な取り組みが必要である。

労組がストレス軽減策を使用者に求めようとするならば、どのような職場であれ、包括的な対策を求める必要がある。しかし、実際には、包括的な対策の実現は難しい。例えば、予防的な労働衛生サービスを利用する権利と、同サービスの使用者による提供を要求することはだれでも思いつく。また、リハビリを受ける権利も要求すべきであろう。それに対して使用者は、現在よりも使用者負担の軽減を求めてくると予想される。例えば、政府の医療保険制度からの所得の80%に当たる給付に上乗せして、工業部門では所得10%に当たる付加的な傷病手当が支給されているが、この傷病手当の使用者負担軽減を使用者は労組に迫る可能性がある。

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