OECD『雇用アウトルック2003年版』、公表される
OECDの『雇用アウトルック2003年度版』が、9月17日に公表された。雇用アウトルックは、OECD加盟国の雇用情勢の分析や予測と、雇用に関するテーマ別からなるOECDの年次刊行物である。本書はまた、公表から約2週間後の9月29-30日にパリで開催が予定されているOECD閣僚会議でのOECD労働大臣会合や三者構成会合における分析的なバックグラウンド情報を提供する目的も有している。
2003年度版の概要
今年度の重点テーマは、「雇用の増加と質の向上」である。OECD諸国における高齢化社会と高財政負担を背景に、失業者(求職者)ばかりでなく、いかに非就労者の就労参加率を高めていくかという課題と対策を概観し、以下の5つのテーマ別分析を行っている。
- 過去10年間における雇用情勢の総合的な動き
- 労働力活用に向けた課題
- 低雇用割合集団の就労化施策
- 給付と雇用(消極・積極的社会施策の相互作用)
- 労働者の技能と能力の向上
過去10年間の雇用に関する取り組みと変化
本書によると、過去10年間の雇用情勢の総合的な動きとしては、雇用情勢が著しく改善した国があった一方で、状況が全く変わらないか、悪化した国もあったというばらつきがある。また、改善された国々においても、雇用創出政策により多くの人が職を得たが、その一方で、創出された雇用の質自体(短期雇用、昇進困難等)が新たな課題を呈している。今後は、このような課題に取り組み、女性や高齢労働者、障害者、非熟練労働者など労働市場から疎外されたり差別されたりしている不遇な集団の雇用機会の改善と拡大、および雇用の質自体の向上に各国政府は取り組みを強化する必要があるとしている。なお、1992年から昨年2002年までの過去10年のOECD雇用アウトルックの重点テーマは、以下のとおりである。
- 1992年
- 失業対策:労働市場改革への取り組み
- 1993年
- 成長と雇用:人材開発の重要性
- 1994年
- 雇用創出と生産的な仕事
- 1995年
- 効果的な積極的労働市場政策の形成
- 1996年
- 労働市場の排斥性への対抗
- 1997年
- 低賃金労働「よりよい未来への足がかりか?それとも罠か?」
- 1998年
- 雇用を中心に据えた社会政策へ
- 1999年
- 若年者に対するよりよい就業機会の提供
- 2000年
- 働き甲斐のある仕事
- 2001年
- 社会と雇用の調和
- 2002年
- 労働の展望に関する研究
以上の雇用重点テーマの変遷を見た時に顕著なのは、焦点が次第に「失業」から「雇用」へとシフトしてきている点である。また、「雇用」を国家として重要な社会政策の中心に据えていこうという新たな認識は、すでに1998年ごろには欧州で定着していることも見て取れる。今年度は、さらに進んで、「雇用自体の質」に焦点を当て、課題解決のための就業訓練機会の拡大や非就労者の就労意識を高めるためのインセンティブの促進、家庭を持つ労働者のための支援措置(例えば、育児サービスへの補助金支給等)を進めていく必要があるということが指摘されている。
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