労働雇用省(DOLE)は、第5回労働組合調査結果を発表

※この記事は、旧・日本労働研究機構(JIL)が作成したものです。

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  • 国別労働トピック:2003年9月

労働雇用省(DOLE)は、第5回労働組合調査結果を発表した。今回の調査の重点は、各労組の組織の特徴、活動内容、政治的関心、規約、広報活動、団体交渉などである。

ただし、予算上の制限により、167の組合連合と10のナショナル・センターのみが調査対象になった。加えて、調査に協力したのは87の組合連合と5つのナショナル・センターのみで、調査結果は、非常に限られた内容になっている。(注1)。

1 労働組合の産業的性格

回答した組織の組合員の多くはマニラ首都圏の製造業で就労する労働者であり、次いで多いのが運輸業の労働者である。

2 地域と存続期間

回答した組織(注2)の89.1%が本部をマニラ首都圏に置いている。

労組の存続期間を見てみると、20年以上が55.5%、10年から19年が約25%、10年未満が18.5%である。

3 組合職員の構成

(1) 委員長

回答した組織の委員長は、全て男性である。また、職員の男女比は、男性4に対し女性が1である。 学歴を見てみると、年々高学歴化が進み、大卒が60.7%を占め中核的存在になっているが、修士卒はまだ1%弱である。高卒が20.3%、小学校卒が0.4%を占めている。 年齢構造は、73%が35歳以上である。

(2) 組合職員

常勤職員は、689人で、この内の462人、67.1%が男性である。

4 会 費

回答した組織の80%が、会費の徴収に対して明確な規約が無い、明確な規約により会費を徴収している組合は20%を占めるのみである。

5 組合大会と公報活動

回答した組織の81が組合大会を開催している。その内5年毎に開催しているのが48.9%、3年毎が9.8%、不定期が15.2%であった。 31.5%が、正式な広報活動をしている。

6 労働協約

回答した組織のほとんどが提携労組の労働協約の交渉をサポートしており、94.3%が、提携労組が使用者側と労働協約を結んでいると認識し、5.7%が現在交渉中だと回答している。各組織は、提携労組の3,388の労働協約をサポートし、その結果、2002年6月30日現在で、845,664人の労働者の契約内容の向上に貢献していると考えている。

7 組合連合の活動内容

各組織は、様々な活動を展開しているが、特に次の6つを重要視している。

  • 組合員の苦情処理。
  • 労働協約交渉のサポート。
  • 法的サービスと医療サービスの提供。
  • 労働関係の教育に関する推進事業。
  • 再就職先の斡旋。
  • 政府の委員会などへの参加。

この他にも以下のような活動を展開している。

  • ストライキのサポート。
  • 共済や信用組合の創設。
  • 福祉に関する事業計画の提供。
  • ニュースレターの作成。
  • 教育に関するプログラムやセミナーの開催。
  • 技能訓練の提供。
  • 各種の書籍の提供や奨学金制度の創設。

8 労使交渉と政治的活動

2001年に47の組合と6つの組合連合がストを決行し、26の組合と11の組合連合がピ ケに参加し、75の組合と10の組合連合が、政治的抗議活動に参加した。 2002年の上半期に、30の組合連合と156の組合が、労使交渉において、ピケや政治的抗議活動をした。他方、58の組合連合が、政府機関の調停による 解決を選択している。47の組合連合が、労働争議の解決において、強制仲裁が使用されることを否定的にみている。

9 グローバリゼーションに対する考え方

回答した組織の20組織のみが、グローバリゼーションを肯定的の考え、その理由には、次のようなものがあった。

  • 世界市場に、フィリピンの製品やサービスの進出機会を提供する。
  • 就労機会が増加する。
  • 国内経済の規模を拡大する。

64の組織が、否定的に見ている。その理由には、次のようなものがあった。

  • 安い輸入品により、国産品の生産量が減少する。
  • 現在の経済状況に好影響を与えるものはなにもない。
  • 国内企業の技術力では、先進国の企業と競争できない。
  • 就労機会が減少し、組合活動に悪影響を与える。

10 雇用形態の多様化

47の組織が、雇用形態の多様化に反対している。その理由としては、次のような理由を上げている。

  • 雇用の契約期間が不安定になる。
  • 労働者側に利益が無い。

11 契約労働に対する考え方

85の組織が、契約労働に強く反対している。その理由としては、58組織が終身雇用に影響を与えると答えた。 5組織のみが、契約労働を肯定的に見ている。

12 賃金交渉における有効的な手段

38の組織が、団体交渉が最も効果的であると回答している。また、17が、団体交渉と地域賃金生産性委員会や国会や地方の議員に働きかける戦略の併用が有効的だと回答している。

13 団体協約がまとまらない時

15組織が、デッドロックを当然のことと考えるが、70組織は、デッドロックに対し余り価値を置いていない。その理由には、次のようなものがある。

  • 強制仲裁により決定されれば良い。
  • 団体協約締結への準備を十分すべきであった。
  • 未締結は、労働者に良い影響を与えない。
  • デッドロックは任意仲裁制度により解決されるべきである。
主な調査結果
調査内容 数値 比率
組合連合とナショナル・センター
組合連合 87 94.6
ナショナル・センター 5 5.4
92 100
連合・独立
連合系 3,061 87.4
独立系 442 12.6
3,503 100
組合員の性別
男性 421,051 41.3
女性 182,894 17.9
非公開 415,901 40.8
1,019,846 100
産業別組合連合数
農林水産業 9 10.3
鉱業 2 2.3
製造業 47 54.0
電気・ガス・水道業 1 1.1
建設業 4 4.6
卸、小売業他 1 1.1
ホテル・レストラン 3 3.4
運送・倉庫・通信業 12 13.8
金融業 3 3.4
不動産・レンタル業他 1 1.1
教育関係 1 1.1
医療・福祉関係 1 1.1
地域や個人に対する様々なサービス業 2 2.3
87 100
存続期間
1年未満 1 1.1
1年以上9年以下 16 17.4
10年以上19年以下 24 26.1
20年以上29年以下 25 27.2
30年以上39年以下 16 17.4
40年以上 10 10.9
92 100
活動内容
書籍の提供 38 41.3
労働に関する教育事業やセミナーの開催 89 96.7
住宅事業 9 9.8
共済や信用組合の創設 67 72.8
奨学金の補助 20 21.7
技能教育 60 65.2
その他 10 10.9

293

318.4
労使交渉の手段 組合連合 傘下の組合
2001年 2002年
上半期
2001年 2002年
上半期
ストライキ 6 5 47 6
2 2 5 5
ボイコット 3 2 14 11
ピケ 11 9 26 58
怠業 3 2 4 3
支援スト 1 1 5 3
帰宅 1 0 4 0
座り込み 4 2 15 8
政治活動により抗議 10 7 75 62
41 30 195 156
有効的な賃金交渉の手段
団体交渉 38 41.3
地域賃金生産性委員会と有力議員への働きかけの併用 17 18.5
法的手段によるもの 12 13.0
産別労働組合運動 9 9.8
地域賃金生産性委員会へ持ち込む 5 5.4
生産性交渉 5 5.4
その他 4 4.3
92 100

出所:DOLE

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