全国継続労働取引制度─労働情報制度(SIL)

※この記事は、旧・日本労働研究機構(JIL)が作成したものです。

カテゴリー:労働法・働くルール労働条件・就業環境

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  • 国別労働トピック:2003年9月

1「ビアジ法」の実施令案に照らしたイタリアの労働市場改革

1.序

2003年6月6日に、ビアジ法(2003年2月14日法律30号〔就業および労働市場に関する政府への委任〕)の実施令案が可決された。同案の内容は、2001年10月に発表された労働市場に関する白書、および、三大労組の1つであるCGIL(イタリア労働総同盟)を除く全ての使用者および労働者組織が合意した2002年7月のイタリア協定を受けている。

同案実施のための戦略として政府は、労働市場に透明性と効率性を付与し、また、闇労働および非正規労働対策等を通じて、とくに社会的疎外の危険にさらされた者(女性、若年者、高齢者、長期失業者)を、できるだけ多く労働市場へ参加させようとしている。

今回の改革は、いわゆる「就業に関する欧州政策」にまとめられたEU指針に沿った、労働市場の現代化を主たる目的としている。その実現のための方法は、以下のとおり。

  • 労働の機会を増やし、質の高い正規就業へのアクセスの平等を万人に確保するため、透明で効率的な労働市場を創設する。
  • イタリア経済の構造的脆弱性(若年失業、長期失業、失業の南部集中、女性および高齢者の労働市場参加率の低さ)に対処するための戦略を実施する。
  • 社会的疎外を予防し、積極的政策を目指すため、就業年齢にある者の状態を監視する。
  • 求人と求職を取り持つ官民の就業サービスについて、その相互間の効率性を高める。
  • 国際市場における競争力、ならびに、労働の保護および有効活用という企業の要請に応えうるよう、労働組合と合意の上、節度ある弾力性を導入する。
  • 経済の変化に労働組織を対応させ、また、社会的疎外の危険にさらされた主体を労働市場に参加させるため、有用な新契約形態を取り入れる。
  • とくに、南部の後進地域、および、質の高い正規労働につく機会の少ないカテゴリーのための、有効かつ現代的な労働政策を実施する。
  • 就業政策を効果的に実施するとともに、保護・代表機関との相互作用にとくに配慮した上、保護・代表機関の役割を拡大する。

2.南部州への支援、女性の社会参加、労使組織の有効活用

南部州に対する支援、女性の社会参加および労使組織の有効活用は、実施令の主たる目的の一部にすぎない。

政府は、同令を通じて、先進地域および後進地域の経済および労働市場の現代化促進を目指している。実際、後進地域においては、労働市場の透明性および労働関係の改善が、経済発展および正規就業増加、社会的一貫性の強化の起爆剤となりうる。

さらに、同令の定める施策には、女性の労働市場への参加および復帰の促進も含まれている。政府は、男女間差別を取り除くため、私生活と労働生活との調和を通じた積極策に着手した。同令が定める新規制としては、女性労働者の利用を促進するようなパートタイム労働の規制がある。

同令の目的を達成するため、政府は、社会に存在するアクターを、様々なレベルで関与させることを想定している。全国レベル、地域レベルおよび企業レベルの交渉は、新制度を実施するための主たる手段である。同令が、社会的正当性および企業の競争力を高めるための優先交渉主体として、労使組織の役割を活かす必要性を強調しているのは、こうした点からである。実際、労使関係における相互主義の現象は、イタリアの制度の中でも最も興味深いものの1つである。使用者の義務(伝統的な役割)または認可および認証に関する義務(新たな役割)に関して相互扶助的な役割を果たすことにより、労使機関は、労使関係の現代化に寄与することができる。また、同令は、こうした機関の有する他の機能および権限を促進することも目指している。具体的には、次のようなものがある。

  • 労働市場の構造化(将来的には、一般的強制的所得支援制度を補完・代替する給付の支給)。
  • 訓練活動のプログラム化および職業訓練(とくに、新見習契約に関連して)の実施手段の策定。
  • 労働契約類型に関する紛争を予防する観点から、労働契約を認証する役割。そして、労働供給契約および請負契約の適切な利用を促進するため、外部化の過程を認証する役割。

3.実施令の主たる内容

政府の提案は、以下の9章からなる。

  • 第1章一般規定
  • 第2章労働市場の組織化および規制
  • 第3章労働供給、業務請負、出向
  • 第4章企業グループおよび企業移転に関する規定
  • 第5章労働時間短縮、変更または弾力化型の契約類型
  • 第6章見習および参入契約
  • 第7章プロジェクト契約および偶発契約類型
  • 第8章認証手続
  • 第9章移行規定および最終規定

第1章(一般規定)は、措置の目的および適用領域について定めている。ここで明らかにされているのは、とくに、提案されている措置が、EUの指針に沿って、就業率を高めること、ならびに、弾力的労働者に対し、適切な安全と企業の要請および労働者の期待に相応しいより高い就業上の地位を保障することを目的としている点である。

第2章(労働市場の組織化および規制)は、上記の目的を受けて、労働市場の新規制について定めている。本章の措置は、「労働市場の透明性と効率性の確保、ならびに、失業者および主たる就職を探している者の就業能力の向上を目的とした効率的で一貫した制度を実現する」ことを目指している(第3条1項)。

この目的を実現するため、1997年12月28日委任立法469号〔州および地方自治体への労働市場に関する役割および責務の付与〕で定められた県の行政上の権能は維持した上で、労働供給、仲介、人材の探索と選別、復職支援活動を遂行する主体のための統一的認可制度が定められた(第3条2項a)。地方公共団体、公立・私立大学および第2段階の公立・私立高等学校機関については、仲介業に関する特別優遇認可制度が定められている。これらの機関には、全国継続労働取引(後述)との相互接続および労働市場関連の情報の関係当局への送付が要求されることになる(第6条1項)。さらに、全国労働協約に署名した使用者組織および労働者組織で、相対的に最も代表的な組織、全国レベルで制度上重要と認知され、かつ、企業活動または労働活動の保護および支援を会社の目的とする組織、労使組織、ならびに、労働コンサルタントの全国団体には、自らの社員のための仲介活動の遂行および有資格就業サービスに認められる認証等の実施も許可される(第6条2、3、4項)。この場合にも、特別優遇認可制度が定められている。

本章第1節では、認可基準、認可取消方法、および、業者名簿の作成等その他諸々の事項について、詳細な定めがある。また、当該地域で就業サービスを提供する官民の実施機関への州の資格付与制度、ならびに、官民の業者間での調整・連携方法に関する一般原則がある。これらは、資格を認められた業者間で社会的協同組合や協定協同組合を組織することにより、労働市場の機能改善ならびに積極政策の実現を目的としている。

憲法4条にいう労働権の実質的な享受を保障するため、実施令15条は全国継続労働取引を定めている。求職と求人を取り持つこの制度は、州のネットワークを軸としている。この制度には、官民の事業者、労働者または企業が提供した有用な情報のすべてが蓄積されることになる。全国継続労働取引には、労働者および企業が自由にアクセスできる。労働者や企業は、仲介者なしで直接に求人・求職情報を掲示することもできる。官民の事業者は、全国継続労働取引に、労働者および企業から取得した情報のうち、選択した時間および地域に関するものを提供する義務がある。

労働市場の透明性を確保するため、第9条では、印刷物、インターネット、テレビなどの情報伝達手段により、人材の探索と選抜、復職、仲介もしくは供給活動に関する匿名の宣伝活動、または、認可もしくは許可されていない官民の実施機関による宣伝活動を禁止している。

第3章(労働供給、業務請負、出向)では、まず、締結しうる労働供給契約に関する規定が置かれている。労働供給を利用しようとする供給先の使用者は、労働社会政策省により認可された供給元を頼ることになる。

期間の定めのない労働供給契約は、第20条3項a)からo)で列挙された労働類型の遂行に関して、技術的、生産的または組織的理由がある場合にのみ認められる。一方、有期の労働供給契約は、供給先の通常業務に関しても可能であり、技術的、生産的、組織的または代替的理由が要求される。有期労働供給契約の利用上限期間は、相対的に最も代表的な労働組合が締結した全国労働協約で定める(第20条4項)。期間の定めのない労働供給契約に関して結ばれた供給元と労働者との労働供給契約は、適用可能な範囲で、2001年9月6日委任立法368号〔パートタイム労働の枠組合意に関するEC指令の実施〕の規定の対象となる。

供給される労働者の経済上および規則上の待遇は、供給先の労働者とで同水準かつ同じ業務を遂行する者が享受している待遇を下回ってはならない。供給元と供給先の使用者は連帯で、労働者に対し、報酬および社会保障拠出を支給する義務を負う。

実施令29条は、民法典1655条に従い締結および規律される請負契約が、請負で利用される労働者に関して請負人が完全な指揮命令権をもつという点、および、請負人または請負で利用される請負人の従業員が、契約から派生する業務の技術的要請に応じた特別な職業能力を有している点で、労働供給契約とは区別されることを定めている。

業務請負の場合、注文主は、請負人と連帯で、労働者に対し、報酬および社会保障拠出を支給する義務を負う。

出向(第30条)は、使用者が、自らの利益関心を満たすため、一ないし複数の労働者を、一定の労務の遂行に関して一時的に他の主体に利用させるものである。この場合、使用者は、当該労働者に関する経済上および規則上の待遇に関する責任を維持する。職務の変更を伴う出向については、関係労働者の合意が必要である。労働者の従来の生産単位から50kmを超える生産単位に移転する場合は、技術的、組織的、生産的または代替的理由の立証が必要である。

第4章(企業グループおよび企業移転)は、民法典2359条および2002年4月2日委任立法74号〔欧州企業委員会の創設等に関する欧州委員会指令の実施〕で定められた企業グループについて、全提携会社の筆頭会社に対し、1979年1月11日法律12号〔労働コンサルタントの職業秩序に関する規定〕1条で定められた責務の履行を委託する権利を認めている。ただし、使用者たる各会社が契約上および法律上の債務者であることは維持される。さらに、企業、工場または企業もしくは工場の一部を移転する場合に、労働者の権利を維持するため、加盟国の立法を類似させるという観点から、企業移転に関する民法典2112条を修正した2001年2月2日委任立法18号〔企業移転等の場合における労働者の権利維持に関するEC指令の実施〕も改訂された。

第5章(労働時間縮小、変更または弾力化型の契約類型)は、「間歇労働(または呼び出し労働)」および「分担労働(またはカップリング労働)」という2種類の新たな労働形態を導入している。

間歇労働は、全国または地域レベルで相対的に最も代表的な使用者組織と労働者組織と(または、暫定的に労働社会政策省)が締結した労働協約で示された要請に応じて、非継続的または断続的性質の労務給付の遂行に関して締結しうる。

ただし、間歇労働は、25歳未満の失業状態にある主体、または、生産サイクルから除外され、移動リストおよび職安リストに登録した45歳を超える労働者による労務給付について、実験的措置として実施されるにすぎない。

間歇労働の利用は、以下の場合に禁止される。

  1. ストライキ権を行使している労働者の代替としての利用。
  2. 前6ヶ月間に、呼び出し労働契約における職務に従事する労働者について、1991年7月23日法律223号〔所得保障金庫等に関する規定〕4条および24条にいう集団解雇が実施された生産単位、または、呼び出し労働契約における職務に従事する労働者について、労働関係の停止もしくは労働時間の縮小(給与補填手当権が発生する)が実施された生産単位の下での利用(組合協定で異なる定めが置かれている場合は除く)。
  3. 1994年9月19日委任立法626号〔労働者の労働安全衛生の改善に関するEC指令の実施〕4条およびその修正規定にいうリスク評価を実施しなかった企業による利用。

実施令36条は、労働者が使用者の業務命令を待っている時間について労働者に支払うべき待機手当で、労働時間に応じて分轄しうるものについて定めている。当該手当の水準は、労働協約で定められるが、いかなる場合も、労働社会政策省令の定める水準を下回ってはならない。同省令に関しては、全国レベルの相対的に最も代表的な使用者団体および労働者団体の意見が聴取される。

待機手当制度は、労働者が、契約上、使用者の呼び出しに応じる義務を負う場合にのみ適用される。呼び出しに対する正当な理由のない拒否は、契約解除、正当理由のない拒否を続ける間の待機手当の一部返却、および、労働協約(存在しない場合には使用者)により定められた方法による損害賠償発生の理由となりうる。間歇労働により、週末、夏期休業期間、クリスマス休暇および復活祭休暇に労務給付が提供される場合、待機手当が労働者に支給されるのは、使用者の実質的な呼び出しがあるときに限られる。

現行法で定められた直接差別および間接差別の禁止は維持した上で、間歇労働者に関する経済上および規則上の待遇は、働いた期間につき、同水準で同じ職務を遂行する労働者が享受する待遇を総体的に下回ってはならない。とくに、報酬総額および報酬の各要素、休暇、疾病手当、労働災害手当、職業病手当、育児休暇などの待遇は、実際に遂行した労務給付に対応していなければならない。

本章第2節に定められた分担契約は、2人以上の労働者が連帯して単一かつ同一の労務の履行を引き受ける特別な労働契約である(第41条1項)。各労働者は、本節で定められた限度で、自ら直接に労務全体の履行について責任を負う。共同債務者うちの1人に関する事情のために給付の提供ができない危険性や、他の債務者に課された給付の提供ができない可能性がある場合は、労働者は、いかなる場合においても自由に労働者間で交代することができ、また、合意の上で労働時間の配分を修正する権限を有する(契約当事者間での合意または労働契約もしくは労働協約で別段の定めがある場合を除く)。

当事者間で異なる合意がある場合を除き、共同債務労働者の1人の辞職や解雇により、契約上の拘束力全体が失われる。ただし、使用者の要請があり、かつ、他の労働者が労務の履行をすべてないしは部分的に果たしうる場合には、この規定を適用しない。この場合、当該分担労働契約は、民法典2094条に定める通常の従属労働契約に変わる。

分担労働の規制は、団体交渉に委ねられる。労働協約がなく、使用者のために提供される給付の場合には、分担労働契約の特殊性との齟齬がない範囲で、従属労働の一般規定が適用される。

現行法の直接差別および間接差別禁止規定は維持した上で、分担契約を締結した労働者の待遇が、民法典2094条にいう従属労働者よりも低いことは許されない。この場合、労働協約で定められた階級区分で同水準に位置付けられる労働者が基準となる。

パートタイム労働規制の改革については、イタリアにおけるこの種の契約類型の普及が、他のEU諸国に比べ遅れていることを指摘しておく。ヨーロッパにおいてイタリアよりもパートタイムの普及が遅れているのは、スペインとギリシャぐらいである。これらの国では、パートタイム労働に就く高齢労働者(55歳から64歳)が極めて少ないこと(8%に満たない)でも共通している。したがって、徐々に高齢労働者が労働市場から退出することで、若年者の労働市場への参加を促進するということも難しい。

他の諸国で、パートタイム契約の締結を促進するのに利用された技術的なインセンティブは、かなり参考になる。フランスは、イタリアと同じく、社会保障拠出金に関するインセンティブを実施したが、促進の試みは無駄に終わった。スペインでも、経済的インセンティブが不十分な上に、これが規制上のインセンティブと関連していなかったが、2001年の改革では、超過労働の利用範囲が大幅に拡大され、労働時間の配分も弾力化された。

他の諸国で、安定的な労働の機会を提供しうることが明らかになった契約システムの運営に際して、規制を無駄に強化することは、当事者の自治および労働協約の役割を損なう。とくに、「弾力化条項」(後述)の導入について課された規制は、労使自治および労働関係の当事者の自治を不当に抑圧する。実施令で採用された措置は、団体交渉および個別の合意に完全な実効性を付与することで、労働者(とくに女性労働者)に対し、現行の偶発的な協働労働や適切な保護を欠く連携的継続的協働労働の代わりに、質の高い契約システムを提供することを目的としている。

労働市場への参加および復帰に困難を伴うと考えられる特定の労働者カテゴリー(若年失業者や年金受給者など)のためのパートタイム契約の締結にも配慮して、今回の措置が想定しているより弾力的な解決策が実施されれば、パートタイム労働契約を効果的に活性化することができるだろう。

こうした前提の下、当該措置は、弾力化の実現や私生活と就業生活との協調を可能にするような手法の具体化に関して、交渉の余地を大きく残している。超過労働に関しても、実施令案は、団体交渉だけでなく、個人による交渉の自治の有効活用も提案している。実際、労働協約がなくとも、超過労働が利用できるように(ただし、報酬が増額される場合のみ)、規制が修正される予定である。

ただし、超過労働の利用促進という目的は、ヨコ割パートタイム(週の通常労働日数働くが、1日の労働実感が通常よりも短いもの)に限定される。したがって、労働日1日の範囲で労働時間が拡大される可能性があるだけで、労働者にとって過重な負担とはならない。タテ割パートタイム(週の数日だけ働き、1日の労働時期案は通常かまたは短いもの)および混合パートタイムに関する弾力化の要請は、労務給付の期間を増加させる可能(柔軟化条項)を定めるだけで十分と考えられる。

弾力化条項に関する実施令の主たる目的は、用語の明確化に尽きる。「弾力化(flessibili)」条項とは、事前に定めた上限内で、パートタイム労働契約における労働時間の配分を変化させうる条項と解される。一方、「柔軟化(elastiche)」条項とは、契約から導かれる労務給付の時間の範囲を拡大ないし縮小するものである。

現行規制には、EU指令にはないような、過剰な制限の傾向が表れていた。つまり、他のEU諸国では、この契約の利用により、労働者や企業のアダプタビリティーの要請を十分に満たしうることが明らかになったにもかかわらず、これを抑制してきたのである。交渉当事者(個人レベルの交渉を含む)が、時間配分の弾力化だけでなく、契約から導かれる給付の期間の柔軟化について合意しえないのか理解に苦しむところであった。

今回の実施令案による修正は、無秩序な規制緩和を意味しない。実際、使用者には、契約上、給付の柔軟性を必要とする技術的、組織的または生産的理由の明記が要求される。当事者の契約上の自治を無駄に損なわないよう、これ以上の制限や障害は設けられていない。さらに、期間の極端に短いパートタイム契約を締結し、後に任意に期間を拡張することで、使用者が給付の柔軟性を乱用しないように、こうした期間の変更に関する上限を定める役割を、団体交渉に委ねている。新規制は、弾力化条項および柔軟化条項を加えうる可能性を、有期契約にも拡大している。

第6章(見習および参入契約)は、職業訓練・再訓練を労務給付に統合した契約類型を定めている。すなわち、見習と参入契約である。

見習契約は、さらに3つの契約類型に分かれる。

まず、教育訓練に関する権利義務の遂行のための見習契約がある。同契約は、3年を超えない期間につき締結され、職業資格の取得を目的としている。契約期間は、取得すべき資格、学歴、取得した職業訓練単位、および、公的就業サービスまたは許可された民間主体によって実施される能力評価に応じて定められる。

次に、専門職化見習契約がある。これは、訓練を通じた資格の取得、ならびに、基本的、横断的および技術職業的な能力の獲得のために、18歳から29歳の年齢層の主体につき締結される。全国レベルまたは州レベルの相対的に最も代表的な使用者組織および労働者組織によって締結された労働協約により、資格の種類に応じて、専門職化見習契約の期間を定める。ただし、2年未満または6年を超える期間は認められない。

最後に、第2段階の学位取得、大学および高等教育の学位取得、ならびに、1999年5月17日法律144号〔就業インセンティブの整序に関する政府への委任等〕69条にいう高等技術専門化のための見習契約がある。この契約も、18歳から29歳までの年齢層の主体を対象としている。高等卒業免状の取得および高等教育コースのための見習契約の規制および期間は、地域の使用者組織、大学および他の訓練機関との合意に基づき、州が定める。

見習に関しては、金銭インセンティブと規制上のインセンティブも定められている。全ての類型の見習に関して、労働関係継続中の労働者の格付けカテゴリーは、当該契約が取得しようとする資格が要求される職務または任務に従事する労働者の所属するカテゴリー(全国労働協約の定めによる)よりも、2段階以上低くいことは認められない。

法律または労働協約で別段の定めがある場合を除き、見習契約で採用される労働者は、法律および労働協約の定める従業員数の算定からは除外される。

就業インセンティブ制度の改革が実施されるまで、現行の金銭インセンティブ制度が適用される。ただし、現行制度による金銭給付の支給は、労働社会政策省令の定める方法により実施される実質検査を受けることが要件となる。

参入契約は、訓練労働契約に代わり導入された。同契約は、一定の労働状況に労働者の職業能力を適合させるプロジェクトによって、労働市場への参加または復帰を実現することを目的としている。対象となるのは、以下の者である。

  1. 18歳から29歳までの年齢層に属する者
  2. 32歳までの長期失業者
  3. 労働ポストを欠くか、労働ポストを喪失しそうな45歳を超える労働者
  4. 労働活動を始めたり再開したりしようとする労働者で、2年以上労働活動を行っていない者
  5. 女性の就業率が男性の就業率に比べ20%以上低い地域、または、女性の失業率が男性の失業率に比べ10%以上高い地域に住む女性(年齢は不問)
  6. 現行法にいう重大な肉体的、精神的または心理的障害を有すると認められた者

参入契約を締結できるのは以下の主体である。

  1. 経済活動を行う公的主体、企業およびその連合企業
  2. 企業グループ
  3. 職業団体、社会文化団体、スポーツ団体
  4. 財団
  5. 公的・私的研究機関

参入契約での採用条件は、労働者の合意を得た上で、一定の労働状況に労働者の職業能力を適合することを目的とする参入個別プロジェクトが定める。相対的に最も代表的な使用者組織および労働者組織により全国、地域および企業レベルで締結された労働協約が、労働者の職業能力の適合化を目的とするプロジェクトの実施(継続訓練職業基金の利用も可能)等、個別の参入計画の決定方法について定める。

参入契約の期間は、9ヶ月未満または18ヶ月超であってはならない。契約は、参入個別プロジェクトについて明示した書面により締結される。書面を欠く場合、参入契約は無効であり、労働者は期間の定めのない労働者として採用されたと解される。

全国、地域または企業レベルで相対的に最も代表的な使用者組織および労働者組織により締結された労働協約が別段の定めをしている場合を除き、参入契約には、2001年9月6日委任立法368号〔有期労働の枠組合意に関するEC指令の実施〕の規定が適用される。労働協約は、参入契約で採用された労働者の割合の上限を定めることもできる。

参入契約に関しても、金銭上および規制上のインセンティブが定められている。参入関係の継続中、労働者の格付けカテゴリーは、参入プロジェクトにおいて取得しようとする資格が要求される職務または任務に従事する労働者の所属するカテゴリー(全国労働協約の定めによる)よりも、2段階以上低くいことは認められない。労働協約が特別な規定を置いている場合を除き、参入契約で採用された労働者は、法律および労働契約で定める従業員数の算定から除外する。

就業インセンティブ制度の改革が実施されるまで、訓練労働契約に関する旧規定により定められた金銭インセンティブが、参入契約で採用された、社会的に不利な立場の労働者に限り適用される。

第7章(プロジェクト契約および偶発契約類型)では、偶発労働および連携的継続的協働労働に関する新制度が定められている。これらの契約類型の腐敗を招いている乱用や慣行を一掃することが目的である。

まず、純粋に偶発的な性質の給付とは、同一注文主との、全体として年30日を超えない期間の関係をいうものと解された。ただし、報酬総額が5000ユーロを超える場合には、プロジェクト労働の規定が適用される。

さらに、実施令案は、以下のように述べて、連携的継続的協働労働者の利用の限界を定めている。すなわち、民事訴訟法409条3項にいう、主として自ら従属的拘束なく労務を遂行する連携的継続的協働労働関係は、注文主によって定められ、結果達成のために協働労働者が自律的に運営する、1ないし複数の特別プロジェクト、労働プログラムまたは労働工程と必然的に関連していなければならない。この場合、協働労働者は、注文主の組織との連携に配慮する。また、労働活動(いわゆるプロジェクト労働)の遂行のために費やした時間は考慮されない。なお、プロジェクト労働の規制が、プロジェクトに携わる協働労働者にとってより有利な個別契約または労働協約の条項の適用を妨げることはない。

プロジェクト契約の締結は、以下の要素を証明するために書面で行わねばならない。

  1. 労務給付のための一定期間または確定しうる期間
  2. 契約から導かれるプロジェクト、労働プログラムまたは労働工程の内容に関する情報
  3. 報酬、報酬決定の基準、報酬支払いの時期および方法、ならびに、費用償還に関する定め
  4. 労務給付提供に際するプロジェクト労働者の注文主との連携方法(労務の遂行における自律性を損なわないこと)
  5. 必要な場合には、プロジェクト協働労働者の健康安全の保護に関する措置

さらに、プロジェクト協働労働者の権利も記載される。とくに、プロジェクト協働労働者に支払われる報酬は、遂行された労働の量および質に対応し、同種の独立労働の給付に対し支払われる通常の報酬を考慮しなければならない。

最後に、社会的疎外の危険にさらされた者、または、労働市場に参加していないか退出の危機にある者によって遂行される純粋に偶発的な性質の労働活動との関係で、補助的性質の偶発労働が規定されている。この種の偶発労働の遂行には、労働引換券の仕組みが用いられる。対象となる労働領域は、以下のようなものである。

  1. 臨時的な性質をもつ家庭内小規模労働(子供、高齢者、病人または障害者の家庭内での世話を含む)
  2. 補足的な私教育
  3. 造園、建物やモニュメントの掃除および管理に関する小規模労働
  4. 社会、スポーツ、文化または慈善関係のイベントの実施
  5. 緊急的な労働の実施に関するボランティア団体との協働労働(天災や不測的な自然事故に関して実施される労働、または、連帯的な性質の労働)

補助的性質の偶発労働活動は、注文主や労務の受益者のために遂行されるものではあるが、そこでは、純粋に偶発的かつ補助的な性質の関係が成立する。全体として年30日を超えない期間につき労働者が携わる活動で、年間の総報酬が5000ユーロを超えないものは、このような偶発労働と解される。

補助労働活動を遂行しうるのは、以下の者である。

  1. 失業期間が1年を超える失業者
  2. 主婦、学生および年金受給者
  3. 障害者およびリハビリ中の者
  4. イタリアで正規の滞在許可証を得たEU域外の労働者で、失職から6ヶ月以内の者

実施令の施行から60日以内に、労働社会政策省は、引換券の販売および換金を認可された主体を定め、所定の省令により、当該労働者の社会保障をカバーする基金創設の方法について定める予定である。

さらに、農業分野で3親等以内の血族および姻族により提供される補助的給付についても定めを置いている。職業分野における補助労働は、2003年財政法45条により規制される。

第8章(認証手続)は、新たな3つの認証制度について規定している。すなわち、労働関係の認証、協同組合の内部規律の認証、ならびに、請負契約および供給契約の認証である。

労働契約の性質に関する紛争を減らすため、実施令で定められた任意の手続に従い、当事者は、契約の認証を行うことができる。

労働契約の認証を行うのは、以下の組織の下に設立された認証委員会である。

  1. 当該地域(国の管轄する労使組織については国レベル)に設立されている労使組織
  2. 実施令の施行日から60日以内に公布された労働社会政策省令で定められた州の労働局
  3. 第6項のリストに登録された公立・私立大学(大学基金含む)

労使組織および大学は、協定を締結し、統一認証委員会の設立を定めることができる。

認証手続は任意で実施される。手続完了後は、当事者に共通の労働契約書面が公布される。認証手続は、次のような原則に従い実施される。

  1. 手続の開始は、州の労働局に通知されねばならない。州の労働局は、認証書が効力を生じることになる公的機関に同通知を送付する。当該公的機関は、認証委員会に対し異議を提出することができる。
  2. 認証手続は、書面の受領から30日以内に終了しなければならない。
  3. 認証書には、根拠を明らかにし、また、上訴しうる期限および機関を記載しなければならない。
  4. 当事者が要求した認証に応じて、認証書には、民事、行政、社会保障または租税上の効果を詳細に記載しなければならない。

第9章(移行規定および最終規定)には、撤廃や最終規定に関する制度が定められている。

4.結論

ビアジ法が労働市場を機能させ、他の欧州諸国との競争力の格差を埋めることができるかを判断するのはいまだ早急であるが、今回の改革は、あらゆる点で、きわめて重要な節目であることは間違いない。ここで示された戦略は、少なくともその意図としては、経済・生産上の新たな要請に労働制度を適合させることを最優先事項としている。この意味で、ビアジ法は、今回の労働市場改革が企業および労働者の利益になるという意識の下、建設的な精神で理解されねばならない。

イタリアの労働法の現代化が達成される日は、確実に近い。しかし、とくに文化的側面で、やらねばならない作業が多くある。実際、労働市場の現代化は、非常に複雑でデリケートなプロセスである。

労使との交渉の始動を見れば、常識が乗り越えられるのか、あるいは結局無駄な試みに終わるかを評価することができよう。見習と参入契約に関する委任の期限が切れる2003年9月13日までには、法案の立法化が達成されねばならない。

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