国民健康保険法案の草案完成、社会保障制度の改善目指す

※この記事は、旧・日本労働研究機構(JIL)が作成したものです。

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  • 国別労働トピック:2003年8月

本誌2003年6月号でもお伝えした通り、現在国民全員を対象にした国民健康保険(JKN)制度の草案が国民議会第7委員会(労働・医療問題担当)によって作成された。

第7委員会委員長は、「健康は人々のベージック・ヒューマン・ニーズの1つであり、健康保険制度を早期に確立することは非常に重要である」とコメントしている。

貧困者も対象にした国民健康保険制度

現在インドネシアでは、公務員を対象にした健康保険制度であるAskesと、民間企業の労働者を対象にしたJamsostekの2つの制度がある。今回この2つの制度を統合し、国家社会保障制度(SJSN)を立ち上げ、1つの基金で国民全員を対象とした健康保険事業、生命保険事業、退職金、年金事業なども行う予定。

この制度が施行された場合、すべての労働者(インフォーマル部門の労働者も含む)は月給の6%(経営側3%、労働者側3%)を保険料として負担。制度の加入者は「医療カード」を所持し、そのカードを提示することによって、国内の各医療機関での受診が可能となる。

この制度が施行された場合、すべての労働者(インフォーマル部門の労働者も含む)は月給の6%(経営側3%、労働者側3%)を保険料として負担。制度の加入者は「医療カード」を所持し、そのカードを提示することによって、国内の各医療機関での受診が可能となる。

労働者の社会保障に対する知識不足

制度の実施にあたり、もう1つの懸念材料として、社会保障制度に関する労働者の知識不足が挙げられる。従来健康保険制度に加盟したことがない労働者に対して、どのように、誰が情報を提供するかが重要な問題となる。

健康保険制度だけではなく、労働者にとって非常に重要な労災保険に関しても、労働者は知識が不足しているケースが多い。2002年のJamsostekの統計によると、同社の労災保険に加入している2400万名のうち、平均して1日あたり443件の労災事故、1日平均8件の死亡事故が発生しており、これらの数字は1996年から増加傾向にある。

一方で、労働者・使用者からの労災申請数はそれほど増加していないことを専門家は指摘しており、労働者が労災保険の存在を知らないことや、申請手続きが煩雑であるため申請しないままでいることが原因だと見られている。Jamsostek専属の医師らも、労働者の社会保障制度に対する知識不足、つまり労働者が労災に直面した時に、どのような手続きで事故を申請し、保険金の支払いを受けるかを知らない場合が多いことを指摘している。そのため、制度に加入し、保険料も納めているにもかかわらず、その恩恵を受けていない労働者も多数いると推測されている。

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