職場での性差別撤廃に向けて:政府の取り組み

※この記事は、旧・日本労働研究機構(JIL)が作成したものです。

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  • 国別労働トピック:2003年8月

2003年5月12日、職場での平等をテーマにしたILOの報告書"Time for Equity at Work"が出版された。この報告書では世界各国の職場での「差別」の現状を取りまとめており、インドネシアはジェンダー差別が最大の問題であることが明らかとなった。

女性の平均賃金、男性の7割程度

同報告書がインドネシアの事例分析に用いた中央統計局(BPS)2001年の労働力調査によると、インドネシア人女性の平均給与は、男性の平均給与の68%に留まっていることが明らかとなった。大卒の女性社員の場合でも、大卒男性社員の平均給与と比べて25%少ない数字となっている。しかしながら、同様の比較による数字は韓国で40%、フィリピン41.1%、シンガポール45.4%(いずれも2000年、非農業部門の平均賃金)となっており、インドネシアの男女の賃金格差は相対的に小さいということが示された。

2000年の女性の労働参加率は51.5%で、近隣のアジア諸国(マレーシア44.7%、タイ64.2%、フィリピン50%、シンガポール51.3%)とほぼ同水準となっている。

婚姻法も性差別の一因

男女間の賃金格差だけではなく、諸手当の支給に関する男女間の不平等も問題となっている。既婚女性で扶養者を持つ従業員の殆どは、同じ条件下で男性従業員が享受している様々な手当や税制上の免除を受けていないという。これは婚姻法によって「世帯主は既婚の男性とする」と規定されているため、死別・離婚などにより世帯主となっている既婚女性は、企業からの家族手当支給の対象外となっているためである。

インドネシアでは世帯に関わる法律の多くが、「世帯主である男性が労働に従事し、妻である女性は家庭内労働に従事する」という古典的な世帯を想定して立案されていることが問題となっており、働く女性にハードルを課している。

ガルーダ航空の女性客室乗務員、退職年齢の引き上げを求める

職場の女性差別の典型例として退職年齢が挙げられる。国営ガルーダ航空の客室乗務員組合(KKB)執行部が、2001年に経営側との労働協約で女性の退職年齢を46歳、男性が56歳とする会社の規定に合意したことを受け、組合内外の女性乗務員がこれに反対している。女性乗務員らは、男性乗務員よりも10年も早く退職しなければならない点について、「女性乗務員は容姿や若さが最重視されていることが顕著に表れている一例」として、経営側と制度に対して批判している。

また、同社は先に述べた既婚女性従業員への家族手当(児童手当など)の支給も行っていないという。

新労働法では男女平等原則

2003年5月から施行された新労働法(「2003年第13号法」)においては、(諸条件が同じであれば)給与や手当てなどにおいて、男女格差を設けてはならないと明記されてはいるものの、ヤコブ労移大臣も、インドネシアにおける性別による格差や差別の存在を認めており、各企業に男女平等に関する委員を設置し、その委員に対して職場の平等に関する各種のセミナーや情報を提供することによって差別の撤廃を目指す方針を明らかにしている。

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