企業年金「ファイナルサラリー年金」の見直し
―定年退職年齢引き上げも
「ファイナルサラリー年金」の見直し
イギリスでは現在、確定給付型の「ファイナルサラリー年金」について見直しを行う企業が増えている。現行のファイナルサラリー年金は給付額が最終給与と勤続年数に基づいて決まる仕組みで勤続年数が40年であれば最終給与の約3分の2が保証されている。しかし(イギリスの年金制度については、本誌2002年9月号、11月号を参照)株式市場の下落や低利子率のため年金基金の赤字が増大し、多くの企業で新規従業員に対してこの企業年金の適用を取りやめたり、現社員への適用を見直すケースもでている。受給額の減少に踏み切るケースや、ロールスロイスやBBCなどで現社員の拠出金を増やす、などのケースも見られる。
2003年5月に発表された全国年金基金協会(NAPF)の250社を対象にした調査によると、現在、新規従業員にファイナルサラリー年金を適用している企業は19%にすぎない。また、ファイナルサラリー年金のある企業のうち40%が過去1年のうちに新規従業員への適用を取りやめた。
さらに調査は次のことを明らかにしている。
- 3分の1の企業が今後1年のうちにファイナルサラリー年金の見直しを行うことを検討している。
- 4社に1社が基金への企業側の拠出を増大した。
- 最も一般的な年金は確定拠出型年金である。
定年退職年齢の引き上げ
ファイナルサラリー年金の見直しの動きが広まる中で、自動車会社ホンダとフランス系保険会社アクサが相次いで定年退職年齢の引き上げを発表した。
ホンダではファイナルサラリー年金基金の赤字が4250万ポンドにのぼり、定年退職年齢を60歳から62歳に引上げることを提案している。新しい退職制度では60歳で退職した場合、年金を満額受給することはできない。また会社側は、会社の基金への拠出金を1年で250万ポンド増額するとともに、従業員にも給与の0.5%の追加負担を提案した。
保険会社アクサは、従業員の定年退職年齢を60歳から65歳に引上げると発表した。アクサでは対象者は5000人に上るが、管理職役員は従来どおり60歳の定年とし、退職所得の減額を伴わないとしたため、従業員側は反発をしている。
NAPFの報告書では、退職年齢の引き上げは企業年金の停止に対する代案となりうるとしている。
新年金保護基金設立
6月11日にスミス雇用年金相は、企業が倒産した場合に従業員の年金受給権を保護する年金保護基金の設立を発表した。
確定給付型年金制度のある企業は、一定の率の徴収額及び各基金のリスクに応じた徴収額を課されることとなり、企業が倒産した場合でも、従業員の年金受給権は倒産時の受給想定額の90%を保証される。
また、支払い能力のある企業が確定給付型年金を取りやめる場合は、従業員に保証されていた給付額を支払うように規則を修正する。
一方で1997年以来、インフレ率にあわせて年金給付額を増額することとしていたが、今回、増額する場合のインフレ率の上限を5%から2.5%に引き下げ、年金基金の負担を減らすこととした。
2003年8月 イギリスの記事一覧
- 企業年金「ファイナルサラリー年金」の見直し ―定年退職年齢引き上げも
- 就業者数の増加が続く
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