失業保険給付の再延長に大統領が署名

※この記事は、旧・日本労働研究機構(JIL)が作成したものです。

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失業保険給付の再延長措置

厳しい雇用情勢が続くなか、失業給付の13週間の追加的延長が、5月22日に、両院で可決され、その後5月28日にはブッシュ大統領が署名を行った。この給付は、6月1日に期限切れとなる予定であったが、これにより2003年12月31日まで期間の再度延長措置が実施されることになる。元来、これは、2002年3月に連邦政府による緊急時の失業保険給付として立法化され、当初は2002年12月までの期限付きで実施されてきたものである。さらに、2003年1月には13週間に受給期間が拡大され、6月1日まで給付期間について延長措置がなされていた。

減税法案に大統領が署名

5月28日、大統領は、「仕事と成長計画」("Jobs and Growth" Plan)と題した2003年度減税法案にも署名を行った。この計画は、中程度の所得世帯と高齢者の所得税負担の軽減を図ることで景気の刺激効果を期待すると同時に、スモールビジネスへの投資を支援することで新たな雇用機会創出を期待するものである。これにより、2600万人の納税者が、2003年の1年間に平均704ドルを節税することになる。受益者の半分以上は高齢者で、この減税プランにより生じる彼らの所得は退職後の主要な生活費となる。また、この計画では、今後2年間で100万以上の雇用機会を創出することを目標として掲げている。大統領の経済諮問委員会(CEA)の試算では、2003年末までに51万の雇用機会、2004年末までには合計140万の新たな雇用機会が創出されることになる。

6月6日の労働省の発表によると、5月の失業率は6.1%という1994年以来の最悪の高失業率となった。失業者数は900万人に達しており、非農業部門での就業者数も1万700人減少している。また、特に製造業では、4月に引き続き雇用機会が減少している。今回の雇用状況の発表に際して、エレーン・チャオ労働省長官は、高失業率に遺憾の意を表しながらも、統計の背後にある現実に注目する必要があることを強調した。すなわち、派遣労働の分野で5万8000の雇用の機会が新たに生まれていること、経済成長指標が上昇していること、これらの数字は1999年10月以来の高い増加を示している。さらに、建設業での雇用が増えていること、製造業での労働時間の増加もよい傾向であるというコメントである。さらに、「仕事と成長計画」により、さらに迅速な経済成長と雇用機会の増加を期待するとともに、労働者の所得減税と高齢者、スモールビジネスへの支援により経済が刺激されて、新たな雇用機会がつくられることを期待すると述べている。さらに、全米商工会議所のドナヒュー会長・CEOは、「雇用機会の創出は、経営者が今最も重点を置くべき課題である。今回の政府の施策が経済成長を加速する原動力になることを期待したい」とコメントしている。しかし、一方で、アメリカ労働総同盟・産別会議(AFL–CIO)のスウィニー会長は、「2001年も2002年も政府の減税政策は富裕者の懐を満たしたが、雇用を生み出すことには失敗している。今回も同じ処方箋では国民は仕事に就くことはできないであろう」と厳しい視点でのコメントを発表している。

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