タクシン首相、メーデーで労働者のケアを約束

※この記事は、旧・日本労働研究機構(JIL)が作成したものです。

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  • 国別労働トピック:2003年7月

タクシン首相はメーデーでのスピーチで、約1万人の労働者を前にして、労働者の生活をより良いものに改善していくと約束し、経済成長が上向きであるため、一時帰休もありそうにないと語った。

労働者の生活改善に取り組む考えについて言及

労働者の子供への高等教育支援や、全地区に質の高い学校を創設することにより、子供の就業を支援することにつながり、それが貧困問題を解消させるであろうと語った。また、製品の品質は経済競争力の重要な要因であることから、労働者の技能開発の重要性についても言及した。

またタイで働く約100万人の外国人労働者については、近隣諸国の国内経済の促進を促すような支援を行い、これにより、タイ人労働者の雇用はより安全に確保されるだろうと述べ、この点については、ラオス、ミャンマー、カンボジアとの間で合意に達していると語った。

失業保険の導入を約束

1997年の経済危機以降望まれていた失業保険の導入に関しては、4月28日に開催された閣議で、2004年1月1日から保険料の徴収を開始する勅令案が認可されている。財政的に余裕がなく施行が困難だと考えられてきた失業保険を導入するため、ここ数年間キャンペーンを行ってきた労働者にとっては、制度の導入による社会保障制度の充実が期待される。

保険制度の内容は、保険の拠出金として、政府は従業員月額賃金の0.5%、労使は1%を負担する。失業保険を社会保障基金から拠出することはすでに決定していたが、政府は2003~2006年の3年間限定拠出とする意向を示している。

失業手当の受給対象者は、保険料を最低6カ月以上納め、かつ労働・社会福祉省の職業安定所に登録した者で、解雇された労働者だけではなく、自己都合による退職者も含まれる。支給額は、前者が賃金の50%を180日間、後者は賃金の50%を90日もしくは30%を180日間のいずれかを選択する方式となっている。但し、解雇の理由が犯罪行為などであった場合は、受給資格を喪失する。(本誌2003年5月号参照。)しかし、財務省はこの失業保険制度の導入による財政負担を懸念しており、政府負担率を引き下げるよう提案している。

この制度が成功裡に導入された場合、タイはGDPだけで判断されるのではなく、ソーシャル・セーフティ・ネットの充実度という面で韓国や他の先進国と比較されるようになるかもしれない。

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