拡大するSARS、海外出稼ぎも打撃、観光業に1万人雇用削減の被害

※この記事は、旧・日本労働研究機構(JIL)が作成したものです。

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  • 国別労働トピック:2003年7月

アジア域内で拡大する新型肺炎SARSに配慮し、インドネシア政府は4月上旬から、SARS感染国への渡航延期勧告を発令した。高失業率の解消及び外貨獲得から重要産業とされてきた海外出稼ぎは、イラク戦争による中東への出稼ぎ停止も重なって、一時停止状態となっている。また、SARSの懸念により近隣諸国からインドネシアへの観光者が減少し、観光業での失業不安も懸念されている。

海外への出稼ぎ、渡航一時停止

感染病に関する1984年第4号法に基づき、ヤコブ労相は4月4日、SARS感染者が拡大している中国、台湾、香港、シンガポールへの渡航延期勧告を発令した。労相はすでに、イラク戦争に伴う中東方面への出稼ぎ禁止例を発令しており、海外出稼ぎに伴う経済的打撃は大きい。

インドネシアは、香港へは毎月4000人程度、シンガポールへの2500-3000人の労働者を供給しており、出稼ぎ労働者からの仕送りによる外貨収入、及び国内の失業状況の緩和などに貢献していた。

インドネシア国内のSARS感染者は、2003年5月上旬現在、感染が認められたのは3名、感染の疑いありとされる4名、及び台湾在住のインドネシア人出稼ぎ労働者3名とインドネシア在住の台湾人1名がSARS感染により死亡している。

出稼ぎ労働者に関するSARS情報の公開を政府求めデモ

SARSによる海外出稼ぎ禁止の状態が続く5月8日、出稼ぎ労働者の団体が国民議会前にて、政府に対してSARS情報の公開を求めデモを行った。デモを行ったのはインドネシア出稼ぎ労働者連盟(KOPBU)労働者らで、組合員らは、台湾でSARSに感染した労働者に関しての情報を政府が適切に公開していないことについて抗議。また、この3人の労働者がSARSに感染し死亡していたという情報が、労働者の家族にも知らされなかった上に、感染症拡大防止のため、この3人の遺体をイスラム教では禁止されている火葬としたことが問題であるとして、政府に情報の透明性を高めるように訴えた。

バタム島、観光客の減少により1万人の雇用喪失の恐れ

SARS感染の恐れから、世界的に海外旅行を自粛する動きが見られる中、国内有数の観光地であるバタム島では、観光客の激減によって、観光・サービス業に従事する労働者の失業が懸念されている。

40のホテル及び3500の娯楽施設(レストラン、マッサージ・パーラー、カラオケ・バーなど)における7000人の単純労働者が、一時的解雇または解雇に直面しているという。バタム産業開発局(BIDA)の統計によると、同島を訪問した外国人観光客の数は、前年同期が1日あたり3000人程度であったのに対し、2003年は1000人程度と激減している。また、有名ホテルの客室占有率も、前年同期が60%出会ったのに対し、現在は30%まで下がっているという。

観光協会の話によると、同島への観光客は、マレー半島に近いという地の利から、シンガポール人やマレーシア人が多く、その他にもヨーロッパや中東からも多いという。

島内のマッサージ施設の売上も、前年の2割程度に留まり、苦しい経営状況が続いているという。

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