ASEAN労相会議開催、労働市場の自由化と労働基準設立の必要性を議論

※この記事は、旧・日本労働研究機構(JIL)が作成したものです。

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  • 国別労働トピック:2003年7月

今回で17回目を迎えた東南アジア諸国連合(ASEAN)労働大臣会議(ALMM)が、2003年5月8、9日の両日に西ヌサトゥンガラ州ロンボク島にて開催された。会議において最大の焦点となったのは、ASEAN域内の自由化に伴う労働者の技能基準の問題であった。またSARS問題への取り組みや先進国への労働部門への経済的支援などが共通課題として話し合われた。

インドネシアの最大の懸念は、高失業率

ASEAN10の加盟国の閣僚と、ASEANプラス3(日本、韓国、中国)の政府代表、及び国際労働機関(ILO)などの国際機関の代表が集ったこの会議の冒頭で、メガワティ大統領はインドネシアの高失業率について言及し、長期的な高失業率は、経済だけではなく、社会、治安、政治的な悪影響も及ぼし、外交問題にまで発展する恐れがあるとした。そしてASEAN域内でも最高水準にある8%の高失業率を解消していくことが、同国の最重要課題の一つであることを強調した。

ASEAN域内の労働市場の自由化には慎重

AFTA(ASEAN自由貿易体制)に伴う域内の労働市場化に関して、各国代表とも各国の労働条件の違いから、早急に実施することは困難であるという意見であった。ヤコブ労相は、「ASEAN加盟国の労働法制や人的資源の質が異なるため、相手国の労働市場を強制的に開放せよと要求することはできないだろう」と述べ、先に開催されたASEAN上級労働役員会議(ASEAN Senior Labor Official Meeting: SLOM)においても、各国の労働関係者と労働移動自由化に必要な労働基準に関して話し合ったことを明らかにした。

外国人労働者受入国であるマレーシアのアブドゥル・ラティフ・アーマド労働副大臣は、域内の労働市場の自由化には賛成であるが、域内共通の技能基準や技能資格試験を設定する必要があり、現在の段階では自由化導入は時期尚早であると述べている。また、EUのような労働市場の自由化戦略をそのままASEANに導入することは、労働者の技能水準のばらつきから不可能であるとしている。また、シンガポールのオン・ケンヨンASEAN事務局長も同様に、域内に何らかの技能標準を設定しない限り、労働者が自由に移動することはできないと同様の意見を述べた。

一方、労働者の送出国であるインドネシアとフィリピンの2各国は、域内の労働市場の自由化に非常に積極的な立場を見せている。

さらに、中国を中心に猛威を振るっている新型肺炎SARSに関しても、域内での協力体制を構築することで合意した。

日本を含めた先進国への労働関連支援要請

ヤコブ労相は、日本を含むプラス3の加盟国への経済的支援を要請。日本に対しては、技能訓練生の受け入れと、労働者保護基金への経済的支援、中国に対しては、社会保障制度の導入に関しての支援を求めた。韓国に対しては、韓国で出稼ぎ労働に従事する1万2000人のインドネシア人労働者の保護、及び出稼ぎ労働者への職業訓練への支援を要請。特に、韓国で慣例となっている最低賃金以下での就労を禁止するように呼びかけた。

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