繊維産業で大きな雇用喪失

 

※この記事は、旧・日本労働研究機構(JIL)が作成したものです。

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  • 国別労働トピック:2003年7月

「私は熟練労働者の雇用を創出するために多極化へ向かう産業の代表であることを誇りに思う。それには十分な口実がある。すなわち、雇用喪失や産業の不安定化は正常であり、これは発展である」。2002年11月28日、ギヨーム・サルコジー繊維産業連合(UIT)会長(MEDEF副会長でもある)は挑発的な言動に譲歩を行うことを恐れなかった。なぜなら、数カ月前から、被服産業を中心とする繊維産業は企業の破産、清算、工場閉鎖、そして千人単位の雇用削減が相次ぎ、再びリストラの嵐が吹き抜けていたからだ。

CGT繊維連盟は52の雇用調整計画が進行中だと発表した。年平均1万人程度だった雇用喪失の速度は加速され、2002年には1万3000人から1万5000人に達したが、産業の再構築プロセスはまだ終了にはほど遠い。30年前に約100万人を雇用していた繊維産業ももはや20万人の労働者を数えるにすぎない。「830人の労働者を抱えて清算中のメタルーロップと同じ状況にある企業が繊維産業ではかなりの数に達する」と指摘するのはCFDT繊維連盟のマルシアル・ヴィデ連盟書記だ。中小企業の現実を特徴づけているこれらの解雇はほとんど無差別に発表されている。これらの中小企業は、非熟練女性雇用が支配的な単産業盆地に局在している。すなわち、ショレやドローム県の靴、ヴォージュ県の綿、オーブ県やロアネのニットとメリヤス、ノール県の織物、ペイドラロワール県やブルターニュ地方のアパレルといった具合だ。

サルコジーUIT会長は、労働力が安価な国々との競争に曝されている企業の収支にマイナスに働く生産の重荷(週35時間制、最低賃金=SMICの引き上げなど)を引き合いに出すのに有利な立場にある。競争による売上への圧力に加え、マグレブ、中東、アジアなどで直接買い付けを行う大規模流通業者(フランスの売上高の7割を占める)の圧力がのしかかり、フランス企業はずいぶんと以前から多極化への道をたどってきた。高級ブランドとデザイナーブランドの高級既製服に特化することでフランスの生産能力を維持できると信じてきたアパレルメーカーも海外で下請生産を始めている。UITは、こうした経営方針を正当化する代わりに、海外に10万人以上の雇用を創出しているフランス企業は今後、熟練雇用を必要とする高付加価値の高級品に専門化していかなければならないと考えている。

こうした現象は最近になって始まったわけではない。避けられないプロセスの最終段階が重要だとでもいうように、現象が突然加速し始めたのだ。2004年に東欧諸国(ポーランド、チェコ共和国、ハンガリーなど)が欧州連合(EU)へ加盟したことがそのひとつの理由になる。マグレブや中東と同様に、これらの東欧諸国は地理的近隣性と安価な生産コストによって、フランス企業だけでなく、ドイツ企業やイタリア企業までも引きつけている。

先ごろ、サルコジー氏は、中国を中心としたアジアからの差し迫った危険に対処するために、地中海沿岸まで広がるこの拡大欧州圏への自由貿易ゾーンの設置を勧告し、当局と企業に「大胆さ」を示すように求めた。

というのも、2005年には、多国間繊維協定が終わりを告げ、割当制が廃止になるからである。フランスにおける中国の繊維製品輸入額は1995年の5億6300万ユーロから2002年の17億6700万ユーロへと急増したが、中国の世界貿易機構(WTO)加盟が生産・流通回路をさらに混乱させる恐れも否定できない。

一方、労働組合もこの現実をはっきりと認めているが、グローバル化に反対するだけでは何の役にも立たない。だが、波状的な解雇に直面し、組合は何もかも放置したまま、中小企業の労働者の利益を保全するはめに陥った。可能なものを守り、地域プランを通して転職のために闘わなければならないからだ。

緊急時にしばしば設置される機関の有効性に懐疑的なCGTは、自らの労働者の将来に責任をとらない「不良使用者」に対して、当局が厳罰で臨むように期待している。また、CGTは1980年代の製鉄業のように、「繊維産業の雇用調整計画」を要求している。

立場の違いはあるが、経営者も組合も職業訓練の推進には関心を持っている。2002年12月には、ほとんど満場一致で2000人の労働者の新技術への適応に関する協約が調印された。繊維産業は怠慢から労働者に相次ぐリストラへの準備を怠らせたが、ようやく変化についていくことを目的とした最初の措置が生まれたといえそうだ。

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