リヨン控訴裁判所:「病気の労働者は手取り賃金を維持する資格がない」

※この記事は、旧・日本労働研究機構(JIL)が作成したものです。

フランスの記事一覧

  • 国別労働トピック:2003年5月

リヨン控訴裁判所は1月30日の判決の中で、「病気の際の賃金は労働賃金の税込み額もしくは手取り額に対応すると団体協約によって定められていないのであれば、税込みの所得が対象になると理解するのが適切だ」と判断した。都市公共交通部門で下されたこの判決は、破棄院が2002年7月4日に金属産業の全国協約に関して採用した立場を見直すものである。リヨン控訴裁判所がこのときの判決の差し戻し裁判所であることを考えると、今回の控訴審判決はなかなか興味深い。

リヨン控訴裁判所では、病気の場合に使用者が義務を負う賃金補填額の計算には2つの方法があると主張された。使用者であるリヨン公共交通社(SLTC)が適用した第1の方法は、病気休業中の従業員へ、社会保障休業補償手当(IJSS)の税込み額-すなわち、一般社会保障税(CSG)および社会保障赤字返済税(CRDS)の控除が行われる-に応じて、計算された賃金補填額を支払うことになる。この場合、従業員の所得は両税の額だけ減額される。

一方、民主労働同盟(CFDT)およびキリスト教労働者同盟(CFTC)の組合支部によって示された第2の計算方法は、病気の従業員に、IJSS手取り額に基づく賃金補填額である手取り賃金の維持を可能にさせる。この方法は、使用者に、IJSSから源泉徴収されるCSGとCRDSの額を使用者に負担させることになる。これは5年間にわたって行われる可能性がある追加支給額を合わせると、病気の従業員へ支払われるIJSSの額の8%に相当するので、争点となった金額は決してわずかではない。

そして、リヨン控訴裁判所が却下したのは労働側の主張であった。同裁判所によると、「病気休業中の従業員へ社会保障制度および企業によって支払われる休業補償額が企業の正規の労働時間に対応する所得総額と等しい額となるように(全国協約)、あるいはその従業員が受け取る額が最初の3カ月の補償期間中にその賃金の100%になるように(企業協約)、協約の規定は、SLTCに病気休業中の従業員へ補償額を支払うことを義務づけている」という。ところで、同裁判所の裁判官によると、「従業員の手取り所得を基準にするという根拠はどこにもないので、対象となる所得は税込み所得である」。したがって、労働者は病気休業中の場合に手取り賃金の維持を主張することはできないことになる。

2003年5月 フランスの記事一覧

関連情報