失業率の上昇続く

※この記事は、旧・日本労働研究機構(JIL)が作成したものです。

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  • 国別労働トピック:2003年5月

失業の増大と雇用調整計画の氾濫は政府にとって、大きな懸念材料だ。したがって、シラク大統領も雇用を促進する動きには、細部まで注視しないわけにいかない。2月27日、グルノーブルに近いクロル(イゼール県)で、ナノ電子工学研究開発所の落成式に出席した大統領は、その雇用創出への貢献を讃えながら、高度熟練性を必要とする雇用を創出するために「投資、技術革新、新事業の開始、そして雇用創出に好都合な受け入れ地として至るところで認められるために休むことなく行動するべきだ」と強調した。このグルノーブル企業は、オランダのフィリップス、米国のモトローラ、そして仏伊のSTマイクロエレクトロニクスが提携して設立されたが、1500人の直接雇用と3500人の間接雇用が見込まれている。

政府は、職業訓練、減税、社会保険料の引き下げ、そして週35時間制の緩和など、企業の環境改善のために、さまざまな手を打ってきたものの、雇用はなかなか改善に向かわない。社会問題省によると、2003年1月の失業率も0.7%ほど上昇した。「フランスは雇用喪失のために試練を受けている労働者の困難な状況に、さらには企業の進化のために将来が不確実な労働者の懸念に対応するために努力していく」と大統領は力説したが、すでに閉鎖が発表されたロモランタン(ロワールエシェール県)のマトラ自動車工場の900人の従業員やオーザ(アリエージュ県)のペシネー工場の218人の従業員、あるいは新たな雇用削減が準備されているジアットインダストリーズの従業員を、シラク大統領の言葉が安心させたとも思われない。景気の低迷はさらに加速され、今後数カ月は労働市場も見通しが暗い。2002年には、+1.5%という低い経済成長率のために、雇用創出の伸びは著しく低下した(全国商工業雇用協会=UNEDICによると+6万3000人、国立統計経済研究所=INSEEによると+0.4%)。そして、2001年6月以降、被補償失業者数は42万人も増加した。UNEDICは「これほど急速かつ大幅に失業者数が増加したことはかつてなかった」というが、この傾向は2003年にも引き継がれるに違いない。

最新の公式統計によると、2003年1月には、カテゴリー1の求職者(期間の定めのない常勤雇用を探している者)が232万3800人を記録した。前月と比較すると、1万7000人(+0.7%)の増加である。カテゴリー1および6(ANPEへ登録する前の月に月間78時間以上の仕事に就いていた者)を計算する旧来の公式指標を尺度にすると、求職者の増加幅はさらに大きい+0.9%になり、合計で272万4000人に達した。失業率は9.1%になる。

政府は若年者雇用制度の後を引き継ぐと見られている社会生活同化契約制度の概要をまだまとめきっていないが、若年者の失業は大幅に増加した(対前月比+2.4%、対前年同月比+7.3%)。また、長期失業(70万2800人)も増加に向かっている。このうち、43万6000人は1年以上2年未満の失業者である。

国立雇用紹介所(ANPE)の登録者も2002年12月と比べると1%増加し、登録抹消者数は4.1%減少した。多くの企業が厳しい状況にあることを窺わせる兆候が部分的失業の急増だろう。社会問題省はまだ経済的理由に基づく解雇の増加を確認していないが、今後、この分野における数字は暗いものになるはずだ。

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