雇用調整計画急増:雇用の悪化に手を打てないラファラン政府

※この記事は、旧・日本労働研究機構(JIL)が作成したものです。

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  • 国別労働トピック:2003年4月

雇用にも失業にも労使関係にも、どれにも暗雲が立ちこめている。SOFRESとフィガロ・マガジンが1月23-24日に実施した世論調査によると、こうした状況を反映し、1月にシラク大統領とラファラン首相はそれぞれ支持率を50%(-2%)と53%(-5%)へ低下させた。

労働団体はラファラン政府の雇用政策が「昏睡状態」だと糾弾する。ACTマニュファクチャリング、大宇、エールリブ、メタルーロップ、アルスロール、ペシネイなど、雇用調整計画が相次いでいるが、政府は今後何カ月かにわたって失業の増加が続くと予測している。2002年は前年よりも10万5000人の失業増で幕を閉じた。そして、フランシス・メール経済・財務相は2003年に関する2.5%の予測成長率が楽観的にすぎると認めた。

持続的な成長に支えられたジョスパン前政権の雇用政策が失業者数を大幅に減らすことができたとしても、フランスの失業率(9.1%)が欧州で最高レベルにあることに変わりはない。景気回復の不在と戦争の脅威との間で、状況がさらに悪化していくとの見方も少なくない。経済アナリストが毎月毎月下方修正する2003年の予測成長率は1.5%と2%のあたりを揺れ動いている。そして、フランス経済の伸び率が2.5%を下回れば、さらに雇用が失われることも間違いない。

シラク大統領が再選を果たし、総選挙で右派が勝利を収めた後、経済と社会の両方の分野で、野党や労使、そして与党の慧眼の議員から発せられた数々の警告に、ラファラン政府は耳を傾けてこなかった。今後は、経済社会政策を緊急に調整しないわけにいかないだろう。

政府は8カ月前から治安問題に集中的に取り組み、その後は、退職年金改革を最優先課題として取り上げることになったが、雇用対策については、企業での若年者契約を除き、十分に力を入れてきたとは言い難い。政府はフランス企業運動(MEDEF)からのリベラルなサイレンには敏感に反応し、企業の負担となる制約を緩め、営利部門で雇用創出に刺激を与えようと努めた。そのために、若年者雇用制度の廃止を発表するとともに、週35時間制を緩和し、労使関係近代化法の解雇規制措置を停止した。

しかし、経済の減速化が進む中で、企業が景気変動の影響をまともに受けたため、「エネルギー解放」の努力は期待された成果を挙げることができなかった。民間雇用の防衛という名目で、雇用省の社会的失業対策(連帯雇用契約など)の予算割当が削減された。そのために、失業が悪化している若年者や社会的弱者が最初に影響を受けている。

ところで、SOFRESの世論調査によると、42%のフランス人は政府が最優先で失業対策に取り組むべきだと考えている。そして8割のフランス人は政府の政策が当面は効果がないと判断している。

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