2003年はGDP7.5%成長、150万職創出が目標

※この記事は、旧・日本労働研究機構(JIL)が作成したものです。

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  • 国別労働トピック:2003年3月

ファン・ヴァン・カイ首相は2002年第2期国会で、2003年の経済、社会目標を明らかにした。首相は一年前の国会で設定された目標の達成状況についても率直に語り、

2002年のGDP(国内総生産)成長率が7%に達する見込みであるとした。貧困者の減少、失業率低下など、2001年よりも2002年の方が良い経済状況になっている。また技能労働者の数も10%増加した。

しかし、2002年の貿易赤字は2001年の貿易赤字のほぼ2倍になっており、国有企業改革にほとんど成果をあげることができなかった。外国投資プロジェクトの登記資本金は一年前に比べ、ほぼ半減した。高地や災害に遭いやすい地域に住んでいる少数民族は貧しく、生活状態は改善されていない。首相は、教育、職業訓練、医療の質向上が重要な課題であるとした。

2003年の主要目標は、7.5%GDP成長である。さらに2004,2005年に8%成長を実現し、2001年~2005年の5年計画のGDP成長(平均7.3%~7.5%)を達成することを目指す。首相は、外国からの投資を増加させる必要があると指摘した。

都市部失業率、6.01%に低下

2002年7月1日の全国都市部失業率は6.01%で、2001年7月1日の同6.28%から低下した。しかし、国有企業の雇用削減により、今後、失業率が上昇すると予想される。

政府は、国家雇用創出基金と職業訓練で雇用創出に貢献した。国家雇用創出基金は、水産業、手工業、農業などにおける1万4000件の事業開始に計1億ドルを貸付け、2002年に33万職を創出した。一方、2002年には、職業訓練コースに約100万人が参加(2001年に比べ13.4%増)、職業訓練校が15校新たに開設され、全国で191校となり、職業訓練予算も1000万ドルに達した。政府は、2003年に職業訓練受講者の人数を2002年よりも7%増加させる計画を立てている。そのための予算は1400万ドルで、各地区の職業訓練施設拡充などにあてられる。また新たな試みとして、山間部の村などへ移動車を使った訓練チームを派遣する。

2002年には、140万職の新規雇用創出が見込まれている。2003年の目標である150万職創出を達成するため、政府は2003年に新規事業者へ計8000億ドルを低利貸付する予定で、この試みが成功すれば都市部失業率を5.9%にまで低下させることができるとしている。

AFTAによる2003年からの輸入関税引き下げの影響

ベトナムのASEAN自由貿易地域(AFTA)への統合は、2003年1月1日より第2段階にはいる。ベトナムは、ASEAN諸国からの輸入品の大部分への輸入関税を2003年までに20%以下に引き下げ、2006年初めまでに0~5%に削減することになっている。ベトナムは、AFTAに遅れて加盟した国として、ASEAN諸国に対し、ASEAN諸国からの輸入品に対する関税に関する、4種類の製品リストを提出している。それらは、関税引き下げ品目、暫時的除外品目、高度な注意を要する品目および非加工農産品目、そして完全な除外品目である。各製品が、どのリストに属すべきかについて、ベトナムとASEAN諸国との間で交渉が続いている。

政府によれば、AFTA統合の第1段階にあたる1995~2003年にベトナムは関税率を0~5%に削減する4320品目を選択していた。2003年~2006年には新たに1270品目について関税引き下げが実施される。この1270品目には電子製品、セメント、肥料、鉄鋼など経済面、雇用面で重要な品目が含まれており、他のASEAN諸国で生産する企業との競争がより激しくなると予想される。株式化を進めている国有企業部門にとっては、輸入関税の引き下げとともに、国からの保護を縮小する方向で国有企業に関する法改正が検討されており、各企業は競争力強化を急いでいる。

ASEAN諸国はベトナムに対し、自動二輪車、自動車を関税品目に加えるよう要求している。しかし政府は最近、完成した自動二輪車への関税を100%、自動二輪車部品への関税を50%とすると発表した。自動車産業についても、座席数8以下の自動車については2010年までAFTAによる関税引き下げを行わない意向を政府は示している。現在は、座席数49以下の自動車、バスへの輸入関税は100%、座席数50以上の自動車、バスへの関税は60%である。しかし、ASEAN諸国からの関税引き下げ要求は強く、政府は自動車への関税引き下げを再検討する可能性がある。

ベトナム資本の自動車会社の大部分は生産量が少なく、利益をあげるために苦労している。部品生産に新規投資を行う余裕はほとんどなく、これらの自動車会社の多くは、塗装、組立など、限定された生産活動を行っている。幼稚産業の域を脱していないベトナム自動車産業は、輸入関税引き下げを急速に進めれば生産中止に追い込まれる可能性が高くなると外資系自動車会社の専門家は見る。

スズキ、ホンダなど、自動二輪車を生産する外国投資企業は、AFTAによる競争激化に備え、ベトナム市場におけるシェアを高めるため、相次いで新製品を投入している。

2002年に50%の輸入関税が課されていた電子(エレクトロニクス)製品の関税率は、2003年に20%、2004年に15%、2005年に0~5%へと段階的に削減される。国際協力事業団(JICA)は、関税引き下げにより、シンガポール、マレーシア、タイなどから安価な製品が輸入され、ベトナムの電子産業は窮地に追い込まれる可能性があると警告している。商業省も、AFTAから大きな影響を受ける部門として、電子、化学、ゴム、肥料、自動二輪車などの諸産業をあげている。

これまで豊富で安価な労働力を武器に外国投資企業の投資を呼び込んだベトナムだが、AFTAへの統合が進むにつれ、関税による保護を失い、競争力を失う外国投資企業が出る可能性がある。このため、今後は労働力の面でも、「量」から「質」の充実を急ぐ必要があると考えられる。中でも、国際競争の激化の中で、競争力を持つ産業とそれに適合した労働力を育成し、近隣諸国に比べて魅力的な投資先になることが重要である。外国投資企業部門が経済発展の牽引車の役割を果たしてきたが、今後も、高技能労働者が、進んだ技術、経営管理手法に触れる場として同部門は大きな役割を果たすと思われる。

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