失業保険制度の財政均衡を目的とした措置に関し労使が合意

※この記事は、旧・日本労働研究機構(JIL)が作成したものです。

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  • 国別労働トピック:2003年3月

失業保険制度の2002年の単年赤字が37億ユーロに達したことにより、失業保険財政の今後3年間の均衡を目的とした話し合いが12月17日より労使間で行われ、12月20日に保険料値上げや失業手当の給付条件及び給付期間の短縮などを含めた合意が使用者団体と主要労組の間でなされた。

保険料引き上げと給付制限に基本合意

労使同数の代表からなる労使委員会にて運営されている失業保険制度の2002年の単年赤字が37億ユーロに達することが判明した。これを受け、全国商工業雇用協会連合(UNEDEC、失業保険制度の管理を行う全国レベルの機関)の労使委員会では失業保険財政の今後3年間の均衡を目的とした話し合いが12月17日より開始され、12月20日に保険料値上げや失業手当ての給付条件および給付期間の短縮などを含めた合意が使用者団体と主要労組(CFDT、CGC、CFTC)の間でなされた。なお、この合意にFOは賛同していない。

合意の主な内容

1. 保険料の値上げ

2003年1月1日より失業保険料が給与の5.8%から6.4%(使用者負担4.0%、労働者負担2.4%)に値上げされる。この値上げに伴い2005年までの収入増は67億5000万ユーロと試算されている。なお、失業保険の財政が最悪だった1992年~1993年の一年間の赤字が約50億ユーロに達したことに伴い引き上げられた保険料は6.6%であり、今回はその水準には達していない。

2.失業保険受給者に対する補足年金保険料の値上げ

失業保険受給者の支払う補足年金保険料を1.2%から3.0%へと引き上げる。これは、失業保険受給者の補足年金保険料がUNEDICによって肩代わりされていた分の減額という意味を持つ。2000年から施行された新規失業保険協約にて、失業手当給付の逓減制が廃止され、平均給与の57.4%に固定されたが、これにより失業手当が1.8%実質的に引下げられることとなる。この措置により毎年5億ユーロ、2005年までに約15億ユーロを節約できると試算されている。

3.給付条件変更および給付期間の短縮

失業手当の受給者のカテゴリー分けを整理・統合しつつ、失業手当受給に必要な保険料納付期間の延長と手当支給期間の短縮を抱き合わせで実施する。

改正前
労働期間 給付期間
離職前18カ月中に4カ月
離職前12カ月中に6カ月
離職前12カ月中に8カ月
(50歳未満)
(50歳以上)
離職前24カ月中に14カ月
(50歳未満)
(50歳以上)
離職前36カ月中に27カ月(50歳以上の特例)
(50~54歳)
(55歳以上)
4カ月
7カ月

15カ月
21カ月

30カ月
45カ月

45カ月
60カ月
改正後
労働期間 給付期間
離職前22カ月中に6カ月
離職前24カ月中に14カ月
離職前36カ月中に27カ月
(50歳から57歳まで)
(58歳以上で過去25年間労働)
7カ月
23カ月

36カ月
42カ月

注:2002年12月31日現在で解雇手続中の労働者は前制度を適用、また2003年1月1日 時点で失業保険を受給している者に関しても前制度を継続。50歳未満の失業者に関しては、 2004年から新制度を適用するが、50歳以上の失業者については、2000~2003年の失業 保険制度協約にて45カ月またはそれ以上の給付権利を持つものに対しては上記制度は適用 されない。(離職前24カ月中に14カ月又は36カ月中に27カ月労働した者)

4.2003年1月1日から2005年末の3年間の財政均衡措置

これらの措置により2004年末までに収支を均衡にし、2006年初めには黒字にする予定であることが確認され、また2003年及び2004年に財政立て直しを確認するための会合を年2回行うこととされた。

失業保険財政の今後の見通し

失業保険財政は保険料の0.6%ポイントの引上げにより、2003年には約20億ユーロの増収を、3年間で既述のとおり67億5000万ユーロの増収を見込んでいる。また一部学者の試算によれば、今回の合意による手当受給条件や給付期間の短縮措置及び補足年金保険料の引上げによって3年間で65億7000万の支出削減が予測されている。

以上の措置全体により、2003~2005年の3年間で約130億ユーロ強の増収を見込んでいる(下表参照)。しかし、2003年末の失業保険制度の累積赤字は47億ユーロと見込まれているため(下表参照)、国からの借入れも予定されている。政府は失業保険制度の財政が悪化した1990年代初頭と同様、60億ユーロの融資を、また、経済成長が見込みより悪かった場合は、さらに15億ユーロの追加貸し出しを約束している。今後の政府からの借金によりUNEDICが現在負っている政府に対する12億ユーロの負債を返済することはまず不可能であると見られている。

当面は、国の保証を受ける形で、50億ユーロ程度の公債を2003年1月中に起債し、つなぎの資金を確保することとされている。

12月20日の労使合意による財政効果(試算) (百万ユーロ)
2002 2003 2004 2005
合意前
収支
12月末の財政状況


-2,400

-5,113
-7,500

-4,038
-11,600

-3,143
-14,700
合意の効果
歳入
手当の支出
 
+1,994
+855

+2,335
+2,829

+2,422
+2,894
合意後
収支
12月末の財政状況


-2,400

-2,264
-4,700

+1,126
-3,500

+2,173
-1,400

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