労働審判官選挙:CGTが首位を維持

※この記事は、旧・日本労働研究機構(JIL)が作成したものです。

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  • 国別労働トピック:2003年3月

労働団体の勢力図が窺えることからも注目を集める労働審判官選挙が12月11日に実施され、結果が発表された。前回の1997年の結果と比較すると大きな変化は見られないものの、いくつかの特徴を挙げることができる。

最初に指摘できるのは、相変わらず棄権率が高いということだろう。1979年には66%の投票率が記録されたが、その後じりじりと低下を続け、前回の1997年には34.0%。それが今回はさらに1.3ポイント下げて32.7%となった。したがって、棄権率は66.4%から67.3%へと上昇。フィヨン社会問題相の言葉によれば、「まったく満足できない」数字となった。

一方、経営者団体の方は、投票率がかなり上昇したが、それでも労働側選挙区には遠く及ばなかった。企業経営者たちはこの種の選挙に関係がないと考える傾向が強いようだ。しかし今年の場合、フランス企業運動(MEDEF)、中小企業総連盟(CGPME)、手工業者連盟(UPA)、全国農業経営者組合連盟(FNSEA)、全国自由業連合(UNAPL)の有力団体が、「使用者連合」(UE)の旗印の下で共同戦線を張ることを決定した。ただし、獲得した得票率80.1%は前回の合計87.9%を7ポイント以上も下回ることになった。

労働審判官選挙での注目は何といっても労働団体間の勢力関係に向けられるが、この面でも大きな変動は生じなかった。依然として、労働総同盟(CGT)が首位を堅持し、以下、民主労働同盟(CFDT)、労働者の力(FO)、キリスト教労働者同盟(CFTC)、管理職総同盟(CFE-CGC)と続く順位も5年前と変わらない。しかし、大変動は起こらなかったものの、それぞれの消長を表すいくつかの動きを確認できる。すなわち、FOの後退とCFTCおよび全国自治組合連合(UNSA)の躍進である。以下で、各団体の内容についてもう少し細かくみていくことにしよう。

首位のCGTは1997年よりも0.9ポイント少ないものの、有効投票数の32.1%を獲得して、他の追随を許さなかった。チボー書記長は、「社会、経済、政治が変化しているにもかかわらず、CGTはその影響力を維持している」と喜びを表現した。難しい運営が予想される大会を3カ月後に控え、ともあれ今回の結果は首脳陣にいくらかの力を与えることになった。

また、CFDTのシェレック書記長にとっても結果は満足できるものだっただろう。ノタ前書記長を引き継いでからわずかに6カ月半。一般にはあまり名の知られていなかった新書記長が率いるCFDTは前回を0.14ポイント下回ったものの25.2%の得票を獲得して2位の座を強化した。シェレック書記長は最初の試練を乗り切ったと言えるかもしれない。

だが、FOには厳しい数字が突きつけられた。FOは得票率18.3%で、大幅に後退した唯一の労働団体となった。前回の数字が20.55%なので、2ポイント以上も減少させたことになる。反主流派が得票率の低下はブロンデル体制への批判票だと攻勢を強めることになれば、再び内部対立の激化に火がつく可能性もある。

CFTCは労働審判官選挙の1カ月前にトップを交替するというリスクを冒したが、労働者からは好意をもって受け入れられた。今回CFTCが獲得した9.7%は1997年の得票率を2.2ポイントも上回ったからである。ダンタンジェール書記長が「きわめて優秀」と評価したこの結果はCFTCが直面してきた数年来の深刻な危機を乗り切るきっかけになるかもしれない。一方、7%の得票を得たCFE=CGCもスコアを1.1ポイント改善し、低落傾向に歯止めをかけることに成功した。

しかし、最も大きな躍進を記録したのは全国の代表権を認められていないUNSAだった。オリーブ会長が率いるUNSAは今回の選挙で888リストを提出し、その数に見合う5%の票を獲得して風穴を空けた(+4.3ポイント)。オリーブ会長は、「結果にはとても満足している。我々は目標を達成した」と喜びを語っている。また、1997年のときの4倍に相当する175リストを提出したグループ10連帯組合連合(中心は連帯・統一・民主=SUD)も票を3倍以上に増やしたが、得票率では1.5%にとどまった。

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