実習は就職への切符

※この記事は、旧・日本労働研究機構(JIL)が作成したものです。

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  • 国別労働トピック:2003年2月

大学在学中に実習を受けることは、労働市場への近道になることが、新聞社の標本調査(イタリアの大学の約4分の1を対象)で明らかになった。これによると、大学卒業者の50%以上が、実習を通じて雇用に至っている。たとえば、ペルージャ大学では、実習を受けた学生の80%、ヴェネツィア大学では65%が、労働契約または協働労働関係へと移行した。確かに、すべての大学でこのような好結果が出ているわけではないが、実習への参加によって就職が容易になることは明らかなようである。

今回の調査によれば、約2万6000件の実習のうち、大学(注1)との実習協定を締結した企業での実習が2万件以上、大学と協定関係にある産業別連合に加盟した企業での実習が約500である(注2)。大学が労働市場への「橋渡し」の役割を果たすことの重要性は、常々強調されてきたが、今回の調査からは、大学が一定の役割を果たしていることが明らかになった。ただし、こうした変化が、大学の自治の強化によるものなのか、学生および企業側の意識の変化によるものなのか、あるいは、一定の水準に達した新たな人材を獲得しなければならないという労働市場側の必要性によるものなのかを判断するのは困難である。

実習の活用に積極的なボローニャ大学のパオラ・マナーリ教育部長は、「優秀な若年者を見極めることができ、また、多くの企業で依然として欠けている新しい考え方や技術革新を若年者から吸収するため、企業は、実習に非常に関心を寄せている。……少なくとも、30年前から、実習制度は存在したわけだが、ここのところの実習ブームは、実習が義務付けられた3年の大学コースの導入による影響が大きいであろう。」と語っている。

実習は、若年者を育成し観察したうえで、採用の有無を判断するための制度である。法律によれば、大学生を実習生とする場合の実習期間は、12ヶ月以下となっている。実習のコストの方が、労働者を採用した場合のコストよりも低い(リスクも低い)ことを考えると、実習は、企業にとって都合のよい制度である。一方、学生にとってのメリットは、研修推進機関によって指名された監督者を通じて、大学の支援を受けながら、労働実務を理解することができる点であろう。

求職・求人情報の場には、テクノロジーも利用されている。実際、インターネットの活用により、企業と学生がアクセスできるデータバンクを導入した大学はたくさんある。このように、大学と地域との関係が強まったのは、実習協定が増加した結果であろう。

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