TUC、使用者による年金拠出の義務化を政府に求める
労働組合会議(TUC)は、従業員の年金積立金の10%負担を使用者に義務づけるよう政府に求めている。まず4%負担から始めて、以後は厳密に計画されたタイムテーブルにしたがって10%まで引き上げていく。一方、従業員には年金スキームへの加入を雇用条件として義務づける。
TUCのバーバー副書記長は大多数の労働者がこの案を支持していると主張しているが、英国産業連盟(CBI)は、TUC案は現在の年金危機をさらに悪化させ、また年金危機の責任を使用者に転嫁しているにすぎないと強く反対している。また拠出金の一部負担の義務化は、賃金と利潤の圧縮に跳ね返り、多くの企業を破産に導くだけだとの見方を示している。
政府も今のところ「義務化」には消極的だ。スミス雇用年金相はこれまでにも、拠出金を負担するかどうかは使用者の自主性に任せるべきで、義務化はあくまで「最終手段」と述べてきた。
現在英国では、株安が長期化していることを背景に、年金の積立額と受給額のギャップが大きく、年間の財源不足は270億ポンドに達している。年金負担に耐えかねて、これまで一般的であった確定給付型の企業年金=「ファイナル・サラリー年金」(注1)を廃止する企業も増えている。2001年に同年金制度を廃止した企業は46社だったが、2002年にはほぼ倍の84社に増えている(全国年金基金連盟(NAPF)調べ)。
こうした企業の動きに対して、労組は争議も辞さない構えだ。ある調査によると、ファイナル・サラリー年金を守るためならストライキに訴えたいとする労働者は300万人いる。事実、2002年6月には、年金制度をめぐるものとしては英国で最初の争議が鉄鋼企業で起き、最終的に労働者側がファイナル・サラリー年金の維持を勝ち取っている(英国の年金制度も含め、本件については本誌2002年9月号参照)。
政府は現在、企業年金の改革についいては、1.監督機関の新設、2.定年年齢の廃止、3.年金を受給し始めてからも就労を認める、4.受給可能な最低年齢を現行の50歳から55歳に引き上げる-などを検討している。
注
- 給付額は、最終給与と勤続年数に基づいて決まり、勤続年数が40年であれば最終給与の約3分の2が保証される。イギリスでは最も充実した企業年金であり、それだけに利回り低下による差損分を補填しなければならない近年にあっては、企業経営の足を引っ張っている。(本文へ)
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