西海岸港湾労働者、6年暫定協約締結

※この記事は、旧・日本労働研究機構(JIL)が作成したものです。

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  • 国別労働トピック:2003年2月

西海岸港湾封鎖に至った労使の対立で重要な争点となっていた新技術導入について、海運会社から成る太平洋海事協会(PMA)は、国際港湾倉庫組合(ILWU)と11月1日に暫定合意に達した。引き続き交渉を続けた結果、両者は11月23日に6年暫定協約締結にこぎつけた。

まず11月1日に新技術導入後の雇用保障と医療給付の継続について合意した。それによると、新技術導入により、貨物のターミナル通過に要する時間を大幅に短縮することが可能になる。これまでは、労働組合員がデータ入力を複数回行うなど非効率な点が多かったことから、こうした作業を省略することに合意した。新技術導入により200人から600人分の仕事が不要になる。しかし、必要がなくなる職についていた労働者のうち、現時点で登録されている港湾労働者については、PMAが退職時までの雇用保障を約束した。

さらに労使は残された事項について交渉を重ね、11月23日に6年暫定協約を締結した。PMAは、賃上げと年金給付の大幅な増額を認めた。今後、協約に関し労働者が苦情を提起し、これを労使間の協議で解決できない場合に、第三者による仲裁が行われるが、ILWUは、PMAの要求にそって、新技術導入を容易にする効果を期待できる仲裁手続に合意した。

労使は、大統領が発動したタフト・ハートレー法により、使用者による港湾封鎖が強制解除された後、連邦調停局の指導の下に交渉を進めてきた。アメリカ労働総同盟・産別会議(AFL-CIO)のリチャード・トルムカ氏は、使用者側も貢献を称えるほど、労使の合意形成に積極的な役割を果たした。

AFL-CIOが、傘下組織の労使交渉に直接あたることは珍しい。トルムカ氏は、積極的に関与した理由について、ブッシュ大統領が、労使交渉における労組の交渉力を弱めようとしていることを指摘し、AFL-CIOは、連邦政府の労使紛争への介入を繰り返させないためにも、この労使紛争を早期解決に導くことが必要であったとした。この労使紛争が長引けば、労働組合に対する規制強化の動きが強まる可能性もあり、トルムカ氏とスウィーニーAFL-CIO会長が、ILWUの交渉に直接関与することを提案した。

前回の3年協約に比べ、協約期間が6年と倍になり、連邦調停局は、長期間の協約が労使関係の安定に役立つと指摘している。この暫定協約は、最終的に協約として締結されるには、組合員の投票で承認される必要があるが、ほぼ確実に承認されるものと見られる。

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