労働市場好転しない
―6大経済研究所、秋期景気動向・労働市場予測

※この記事は、旧・日本労働研究機構(JIL)が作成したものです。

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  • 国別労働トピック:2003年1月

6大経済所の秋季景気動向・労働市場予測が2002年10月22日に発表され、来年度は労働市場は好転せず、景気も穏やかな回復を見せるだけだが、財政赤字については、抜本的な改善が示されるとの予測が行われた。

まず6大研究所は、景気の緩やかな回復を予測し、国内総生産(GDP)の実質経済成長率を2002年は0.4%,2003年は1.4%と予測している。地域別では、西独地域では2002年は0.4%,2003年は1.3%,東独地域では2002年は0.2%、2003年は2.3%と予測し、来年は特に東独地域での景気回復が進むとしている。また、ユーロ圏全体では、成長率は2002年が0.8%,2003年は1.8%と予測し、米国については、2002年が2.3%,2003年は2.7%と予測している。

もっとも、この緩やかな回復基調の予測には前提があり、6大研究所は以下の前提条件を挙げている。

  • イラク紛争がエスカレートせず、来週には収拾に向かい、これによって原油価格が来春には1バレル29ドルにまで上昇するが、その後25ドルまで下がること。
  • 欧州中央銀行の金利が差し当たって現状で維持され、2003年末に0.25ポイント引き上げられること。
  • 2003年に、新たに歳出を60億ユーロ削減し、65億ユーロの増税を行い、税制改革に定める減税の第2段階を2004年まで行わないこと。
  • 株式市場が、現今の水準で安定すること。
  • 為替市場で、ドルに対して僅かにユーロ高であること。
  • 協約賃金が、2003年は産業全体で平均2.9%の賃上げに止まること。

このような景気の緩やかな回復予測にも拘わらず、6大研究所は労働市場は好転しないとし、ドイツ全体の失業者数は、年平均で2002年の405万人から、2003年には410万人に僅かに増加すると予測している。また失業率も、2002年9.5%,2003年は9.6%と予測している。

6大研究所は、このような予測から、労働市場改革案としてのハルツ委員会答申(本誌2002年11月号参照)も評価しておらず、ハルツ案が3年以内に失業者数を200万人減少させるとしていることを、現実離れしているとしている。例えば、同研究所はハルツ案の目玉である職安(将来のジョブ・センター)に人的サービス機関(PSA)を設置し、長期失業者を派遣労働者として派遣する構想についても、PSAが派遣先に失業者の賃金に対するかなりの額の補助金を支払わねばならない可能性を指摘し、コスト面で問題があることに言及している。また、派遣労働者の使用期間後の賃金を、労組の主張で、PSAと管轄労組の賃金協約の規制下におくことになったことにつき、賃金協約で定まる賃金が、民間の派遣会社ないし派遣先の賃金を上回らないことがはっきりしておらず、ここからPSAが民間の派遣会社の不利益において競争を歪める危険性を指摘している。また、同研究所は、「私会社」や個人世帯で働く低賃金労働の上限の引き上げで、従来存在した雇用が排除されてしまう危険性を懸念している。さらに、失業関連給付の統合で制定された失業給付IIの支給額が、従来の社会扶助の支給額を超えた場合、失業者の労働市場に参入する意欲を減退させる可能性も指摘されている。総じて、同研究所は、ハルツ案は失業者の仲介を迅速かつ効率的にするだけで、失業の根本原因を除去するものではないと否定的な評価をしている。

これに対して財政赤字の削減については、6大研究所はEU委員会や所銀行よりも楽観的な予測を行っており、財政赤字の国内総生産に対する割合は(EUの財政安定協定では3%以内に抑えるものとされており、ドイツについて、EU委員会は先週、2002年は3.7%,2003年は3.2%と、厳しい見方をしていた)、2002年は3.2%だが、2003年は1.9%に低下すると予測している。

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