時間外労働枠を180時間に拡大するデクレを発表

※この記事は、旧・日本労働研究機構(JIL)が作成したものです。

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  • 国別労働トピック:2003年1月

フィヨン社会問題・労働・連帯相は9月18日の閣議に「賃金・労働時間・雇用開発に関する法案」(週35時間制改正法案)を提出した際に、時間外労働枠の拡大はデクレによって定めると明らかにしていたが、その内容が発表された。時間外労働枠を130時間から180時間へ拡大するこのデクレにともない、労働法典(労働法典D.212-25条)と農村法典が修正される。

単一枠

従業員1人あたりの時間外労働枠は年間180時間になる。この枠は今後、単一に定められる。すなわち、ブルーカラー、ホワイトカラー、職長、L.212-15-2条に記されている管理職(集団的労働時間に従う管理職)、そして非管理職の巡回労働者、さらには個人請負協定に調印していない—あるいは、週間もしくは月間の基準に基づき、時間で設定された請負協定によって個別的に定められた-L.212-15-3に記されている管理職(「中間管理職」)を対象とする。

これまで、2001年10月15日に定められた時間外労働枠は原則的に130時間だった。ただし、週間もしくは月間の基準に基づき、時間で設定された請負協定によって個別的に定められた中間管理職は180時間だった。そして、従業員20人以下の企業の枠は、2002年に170時間、2003年に180時間へ拡大されるはずだった。この中小企業を対象とする過渡的な規定は廃止され、新しい180時間の枠は規模に関わらずすべての企業に適用される。

年間の基準に基づいて時間で設定される請負制に依存する経営管理職と中間管理職はやはり、時間外労働枠の適用領域から除かれる。

また、新デクレは労働時間を年間計算する労働者に関する2001年10月15日の規定には、変更を加えていない。

したがって、団体協約が31時間と39時間の限度で週労働時間の変動を定めている変形労働時間、あるいは年に70時間以下の法定週労働時間を超える週労働時間数を定めている変形労働時間の場合、時間外労働枠は依然として、90時間に定められる。

補償休暇

時間外労働の規制枠が180時間へ拡大される結果、2つの臨界点も引き上げられる。1つは労働監督局の認可を求めなければならない臨界点(規制枠の枯渇後に行われる時間外労働のために必要)であり、いま1つは規制枠を超えて行われる全部の時間外労働について補償休暇が与えられることになる臨界点である。

フィヨン法案が成立・施行されない限り、拡張部門協約によって定められている協定上の枠の水準がどこにあろうとも、補償休暇が始まる臨界点を決定するのは規制枠である。「賃金・労働時間・雇用開発に関するフィヨン法案」は10月15日に国民議会の第1読会で与党の支持によって採択され、上院の審議は10月23日に開始された。

法案が成立した場合、時間外労働枠をこのデクレと異なる範囲に定める拡張部門協約が不在の場合に、この規制枠が補足的に適用されることになる。

2004年7月1日までに見直し

デクレはいまひとつ見直し規定を定めている。それによると、労働大臣は2004年7月1日までに全国団体交渉委員会へ、時間外労働枠の決定に関する団体交渉と時間外労働への依存の状況に関して、報告書を提出しなければならない。そして、この報告書と経済社会委員会の意見に基づいて、時間外労働枠に関する規制措置が見直される。

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