上半期は経済的理由に基づく解雇が大幅増

※この記事は、旧・日本労働研究機構(JIL)が作成したものです。

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  • 国別労働トピック:2003年1月

各地で雇用状況が悪化している中、あらゆる指標が赤信号を示しているので、今後数ヶ月の間に失業曲線が好転するとは期待できない。経済成長の牽引役である消費が沈滞気味で、景気回復の脚を引っ張っている。夏には上昇軌道に乗るかと一瞬期待させたものの9月には再びマイナス成長(-1.2%)。家計消費も活気がなく、中期的にはほとんど改善されそうもない。失業は2001年5月以降増え続け、経済的理由に基づく解雇は上半期に15万人に達した(2001年上半期は11万人)。

メール経済・財政相は10月23日の国民議会で、「2003年財政法に示された見通しを変更しないために、政府は必要条件を結集したと考えている」と述べた。とくに家計購買力の上昇が強調されたが、予算案を構築するために政府が前提とした経済成長率(2003年に+2.5%)にはとても手が届きそうもないというのが一般的な見方だ。

「2002年の経済成長率は輝かしい数字とはいえない。1%と1.2%の間で、おそらくは1%に近い水準だろう」とランベール予算担当相も認めている。2003年の予測も景気のいい話は聞かれない。バカンス開けの消費の落ち込みには楽観的な見方を取る機関でさえも「驚き」を示した。経済活動の再発進はまだ遠い。投資に消極的なフランス企業は世界の景気が回復に向かったとしても、その恩恵を手にする最適の位置にはまだ着いていないだろう。

このような環境の中で、2002年と同様に2003年も雇用を失うことになりそうだ。失業者数(約240万人)は増え続け、いつもの通り、最も弱い立場の人たち(長期失業者、低資格労働者、無資格労働者)が雇用へ復帰するチャンスは少なくなる。雇用に恵まれた時代にあっても、ジョスパン政権はこの失業の「中核」を削減することはできなかったが、今後はその可能性がさらに小さくなる。というのも、企業がブレーキに足をかけているからである。企業は採用を手控え、若年者の失業を急増させている、管理職雇用協会(APEC)は新聞に発表された求人数が42%も減少したことを明らかにした。一方、労働省は上半期の経済的理由に基づく解雇が前年同期よりも4万人上回ったことを確認した。そして、雇用調整計画の発表が相次ぎ、一部地域では、情報統制をするほど知事が神経質になっている。

フィヨン社会問題相は、このような雇用情勢の悪化に逆行するかのように、「労使関係近代化法」の解雇規制措置を18カ月停止すると発表した。この法律によって「雇用へブレーキ」をかけられていた企業経営者に安心感を与えたいというのが意図する狙いだ。しかし、おそらく来年初頭に実施されるこの凍結は直ちに膨大な数の雇用調整計画を導く可能性もある。労使関係近代化法に定められている解雇予告期間の長期化によって解雇を思いとどまらされていた企業が一斉に解雇に向かう可能性も否定できないだけに、危険な賭けにも見える。

政府と労使当事者にとってのもう1つの懸念材料は、失業の増大に耐えられなかった全国商工業雇用協会(UNEDIC)の財政だ。この失業保険制度は2002年末に赤字を35億ユーロに膨らませる。制度の運営者である使用者団体と労働団体はおそらく、12月に労働審判官選挙の後で、新たな措置を取り決めるために、話し合いを行うことになる。しかし、雇用復帰援助制度(PARE)の将来像や失業手当の逓減性に関する議論はすでに始まっている。

政府は激しい乱気流に巻き込まれてしまった。経済政策の選択の幅が狭いことで、ラファラン首相が掲げた改革の意欲も空回り気味だ。首相が企業の競争力改善の手段であると考えている社会保険料の引き下げも予想以上に時間がかかりそうだという。首相は公共部門の補助を受けた雇用よりも民間の雇用拡大を支持しているが、2003年の初頭は、日々失業の増大に直面しながら、各種の課題と取り組まなければならない政府にとって厳しい状況が予想される。

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