最低賃金の引き上げを巡る労使の攻防

※この記事は、旧・日本労働研究機構(JIL)が作成したものです。

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  • 国別労働トピック:2003年1月

2003年に予定されている最低賃金の改定に向けて、労働組合会議(TUC)と英国産業連盟(CBI)は2002年10月、最低賃金委員会(LPC)に意見書を提出した。TUCは最低でも時給5ポンドの大台に乗せたい意向だが、CBIは4.5ポンドが限界であると主張。LPCが政府に答申を出す2月まで、労使の攻防が続きそうだ。

TUCの主張

現行の最低賃金額は、22歳以上を対象とした通常レートで時給4.2ポンド。TUCは2004年までに5.0~5.3ポンドへ大幅な引き上げを主張している。TUCはその根拠として、1.最低賃金から利益を得るべき労働者数としてLPCが当初想定していたのは190万人であったが、これまでの4回の改訂でも、目標の70%までしか達成できていない、2.2001年に10.8%引き上げられたが、経済への悪影響はなかった――などを指摘し、5ポンド台への引き上げは十分可能だとしている。

CBIの主張

一方、CBIは、これまでの引き上げを「適切で経済に大きな影響はなかった」と指摘したうえで、次の改訂では4.5ポンドが限界としている。CBIの調査では、1.最賃が4.7ポンドになった場合、加盟企業の21%が解雇を、34%が労働時間の短縮を実施し、2.5ポンドでは36%が解雇を、32%が時短を実施し、3.5.3ポンドでは48%が解雇を、40%が時短を実施する--。とくにホスピタリティー業、レジャー業、観光業、繊維業などで最も厳しい影響が出ると見ている。

特別レートの存廃

TUCはほかに、通常レートよりも額が低く設定されている18~21歳対象の特別レート(現行3.6ポンド)を廃止するとともに、最賃の適用対象年齢を16歳まで引き下げることも要求しているが、CBIは反対だ。特別レートは使用者にとって若年層を雇用する動機付けになっており、廃止すれば使用者は若年層の雇用を控えることになるばかりか、若年層自身が積極的に労働市場へ参入しようとしなくなると主張している。

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