アメリカ銀行、株主にCEO高額退職金に対する拒否権を付与

※この記事は、旧・日本労働研究機構(JIL)が作成したものです。

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  • 国別労働トピック:2003年1月

ジャック・ウェルチGE前会長などの企業経営者の高額退職金が世論の批判を受ける中、アメリカ銀行取締役会が株主の多数票の意向を受け、最高経営責任者(CEO)現役時の年収(ボーナスを含む)の2倍以上の退職パッケージを支払う場合に、その可否を株主の投票に委ねると発表した。2002年4月の株主総会で、同社株主は、チームスターズ労組による同提案を51%の過半数で承認していた。アメリカ銀行では、ヒュー・マッコル前CEO、デビッド・クルター前CEOが、それぞれ2800万ドルのストック・オプション、推定5000万ドル~1億ドルの退職パッケージを受け取っていた。

AFL-CIOは、企業統治改革キャンペーンを展開し、巨額役員報酬を批判している。ここ2年間の株安と近時の企業スキャンダルの続発で、労組の主張に他の機関投資家も同調し、給与とボーナスの3倍以上に達することもある退職パッケージに厳しい目を向け始めた。チームスターズ労組は、アメリカ銀行以外に、エアボーン社、シスコ社でも株主総会で同様の提案を行い、過半数の票を得たが、これら2社では現在のところ取締役会が承認していない。

取締役の報酬の抑制に企業が乗り出すことは稀である。しかし、ノーフォーク・サザン社は最近、労組主導で株主総会で承認された提案を受け入れ、取締役の退職パッケージが現役時の報酬の3倍を越える場合には、株主の承認が必要であるとした。

グレート・レークス・ケミカル社では、3年連続で、株主の過半数が取締役退職パッケージに対する株主の拒否権を要求していたが、同社取締役会は、これを無視し、批判を浴びていた。今回は、全米州・郡・市労働組合(AFSCME)、コネチカット州退職信託基金が中心となって60%の賛成票を獲得した。同社は、内規を変更して、高額取締役退職パッケージを株主が拒否できることとした。

退職パッケージの内容は、顧問料、社有機の利用権など様々なものがあり、現役時の報酬を市場よりも高い利子率をつけて先送りして退職後に受け取るようにするなど、外部には十分に情報公開されていないものも多い。証券取引委員会も退職後の待遇について、より詳細な情報公開の義務付けを検討している。

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