中間選挙での共和党勝利、労組に厳しい展開も

※この記事は、旧・日本労働研究機構(JIL)が作成したものです。

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  • 国別労働トピック:2003年1月

2002年11月5日に実施された中間選挙で共和党が上院・下院両院の過半数を獲得した。現職大統領の所属政党が両院で議席を増やすことは史上ほとんど例がなく、共和党大統領としてはセオドア・ルーズベルト大統領以来100年ぶりとなる。ブッシュ大統領は、各地で応援演説を行い共和党候補の勝利に貢献したため、党内でも求心力を増している。共和党は、上下両院の議長、各委員会の議長などを独占し、議事進行の流れを支配することになる。そのため労働組合は政治的にやや苦しい立場に置かれることが予想される。

アメリカ労働総同盟・産別会議(AFL-CIO)は750人のフルタイム政治活動担当者を全国に派遣し、2000万枚のビラを配布したほか、1350万人の組合員に少なくとも4度連絡を取って民主党への支持を訴えた。しかし、安全保障やテロ対策を争点にした共和党に対し、経済運営、雇用、企業会計スキャンダルを争点に選挙に臨んだ民主党は苦戦を迫られた。

選挙に勝利した共和党は、国土安全保障省設置法案、2001年に実施した大型減税の恒久化などに着手するものと予想される。これまで民主党のリベラル派のエドワード・ケネディ上院議員が委員長を務めた医療・教育・労働・年金委員会の委員長には、共和党のジャッド・グレッグ上院議員が就任予定で、労働問題について使用者よりの委員会運営をするものと予想される。

公正労働基準法(FLSA)については、使用者が、時間外手当の適用対象となる労働者の分類の縮小を求めている。グレッグ上院議員は、時間給労働者に対し、時間外手当を得る代わりに休暇を取る選択肢を与える法律制定に意欲を示している。

使用者グループは、家族・医療休暇法の運用厳格化を求めている。同法は、労働者の子供の誕生、またはその世話をする場合、労働者本人やその家族に重大な病気、負傷がある場合などに、1年間に12週までの無休の休暇を取得する権利を労働者に与えている。使用者は、些細な健康上の問題で同法にもとづく休暇を取る労働者が多く、使用者の負担を増やしていると主張している。

共和党議員は、西海岸の港湾封鎖につながった国際港湾倉庫組合(ILWU)の勢力を削ぐために、同労組を鉄道労働法の規制対象とし、政府による労使紛争への介入をより容易にすることを検討している。同労組を分割する案も浮上している。

ただし、労働問題は常に両党の立場の違いが大きく、共和党が両院を制したものの民主党の議事妨害を阻止できるほどの大差をつけての勝利ではないため、共和党は、労働規制について狭い範囲に絞った改正を積み重ねることになると思われる。

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