ハンガリー/最近の労働市場
 ―移民の減少、多国籍企業における従業員解雇

※この記事は、旧・日本労働研究機構(JIL)が作成したものです。

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  • 国別労働トピック:2002年12月

2002年にハンガリーにやって来た難民の数は前年に比べ減少した。ハンガリーでの滞在許可を申請する移民の数も減少してきた。ハンガリー内務省「出入国管理・市民権局」局長によると、2002年初頭の数ヶ月間で難民の数がかなり減少した。難民の数は2000年には6500人、2001年には9000人であったが、2002年1~6月にハンガリーに来た難民は3000人に満たなかった。しかし、ハンガリーへの入国方法は相変わらずである。つまり彼らの大多数90%は、ハンガリーに来るために「非合法的なやり方」を試みている。

こうした難民の期待からすると、彼らにとってハンガリーは「目指す国」とはなっておらず、その過半数は自分が提出したハンガリーへの滞在許可申請に下される結果を待たずに西ヨーロッパ諸国への出国を試みている。ハンガリー国境警備隊の報告によれば、ハンガリー国境を不法な手段で出国しようと試みる人たちの75%が、国内につくられた難民のための「収容所あるいは保護施設」からきた人だった(注1)

ハンガリーではEUの地域分類(NUTS II, Nomenclature of Territorial Unit for Statistics:地域統計分類単位)理論に従って、7つの「難民組織」が設立された。これらの組織は1万7000件の申請を扱っているが、6000件に関しては決定が行われなかった。そのため「出入国管理・市民権局」局長は、ハンガリーの滞在許可を申請中の外国人にもうしばらく待つよう要望した。

ハンガリーに正式に入国を許可され居住する外国人は現在8万人であるが、その大多数は隣接諸国からの人々である。ハンガリーに滞在許可を申請する移民の数は大幅に減少してきており、現在は3700人に達していない。これまで滞在許可申請者のうち3分の1以上がルーマニア国民であったが、今年は50%減少している。今年1~6月の間におけるハンガリーからの国外退去外国人は3000人に達したが、その2人に1人はルーマニア国民であった。表1に、1988~2002年にハンガリーに来た移民の数を示す。

表1 ハンガリーにおける移民:1988~2002年

移民の数 移民のうちヨーロッパ 以外から来た人の数*
1988 13,173  
1989 17,448  
1990 18,283  
1991 53,359  
1992 16,204  
1993 5,366  
1994 3,375  
1995 5,912  
1996 1,259  
1997 2,109 1,411
1998 7,118 3,351
1999 11,499 6,008
2000 7,801 6,392
2001 9,554 8,974
2002(1月~6月) 3,120 2,899

*ハンガリーがヨーロッパ以外から移民を受け入れ始めたのは1997年。

失業者数の減少—就職の難しい若年者

中央統計局(KSH)の最近の報告によれば、2002年3~5月に失業者数は0.1ポイント減り、登録失業者数は5.6%となった。労働年齢人口の63.8%が労働市場にあった。

381万1000人が被用者として登録された2000年に比べ、2001年の被用者人口は384万7000人であった。今年の被用者人口は385万1000人で4万2000人の増加を示している。

2002年3~5月における失業者数は22万9000人、前年(2001年)同期に比べると3000人の減少を示している。これはILO方式で算出すると、5.6%の失業率になる。EU全体における2002年4月の失業率は7.5%であった。

失業者の46.2%が少なくとも1年以上にわたって求職活動を行っているが、その割合は前年同期(2001年3~5月)比で0.1ポイントの低下。平均失業期間は16ヵ月で1年前とほぼ同じである。失業者層に占める15—24才の年齢層の割合は22.3%である。この年齢層の失業率10.8%は国全体の平均より高い。一方EU諸国全体の2002年4月における同じ年齢層の失業率は14.8%であった。

2002年5月末におけるハンガリーの失業者登録数は33万4000人、うち11万人が失業手当を受給し、そのうちの8000人が一種の収入補助を、また10万5000人が「収入補助」の代わりに生活保護を受けていた。表2に2000~2002年から選択した時期(5月)における被用者数を示す。

表2 ハンガリーの被用者数 (単位:100万人)
被用者数(単位:100万人)
2000(5月) 3,811
2001(5月) 3,847
2002(5月) 3,851

資料出所:ブダペスト中央統計局2002年、Nepszabadsag, 2002. Julius 2., p.15(ハンガリー語版)

多国籍企業における解雇と解雇に対する訴訟件数

最近の公式発表によれば、Szekesfehervar地域(ハンガリーの首都から約60km)のICT部門で最も重要な使用者の一社IBMで、情報通信技術(ICT)部門の世界的不況により1000人が解雇された。同地域ではフィリップス社の組立工場も2001年8月~2002年7月に従業員150~200人の解雇を予定している。雇用削減は、同社がハンガリー工場でのビデオ・テープ・レコーダーの製造を終了したことによる。同社の広報担当役員によれば、ハンガリー国内で操業中の最終組立工場で、同社が近い将来これ以上の解雇を行う予定はないとのことである。

労使紛争に関する最近の調査によると、裁判所が評決を下すのは全体の50%に過ぎない。研究者らは以下の問題に関して339件を分析した。

  • 雇用の創出
  • 労働規律
  • 雇用の即時終了
  • 賃金

調査を行ってみて研究者が最も驚かされたことの一つは、従業員側(原告)が労働協約や労働契約に関する法律を引き合いに出さなかったことである。使用者側(被告)でさえ、従業員との論争において法的論証を一切用いていなかった。言い換えれば、これは労使紛争の法的調整が労働法規に準拠することなく機能しているということである。

原告の大多数は従業員であり、ほとんどのケースが解雇に関連している。調査資料によるとハンガリーの従業員は解雇されて初めて、雇用か賃金に関して法的な解決を期待して訴訟を試みている。裁判所が司法上の解決を提示するのは、全体の50%(つまり2件に1件)に過ぎず、訴訟過程で関係者は法的な解決以外の解決を見出そうとしている。公共部門においては、法的紛争の大多数が職位の任命に関するものであった。

法的紛争に係わった人たちを人口動態と職種の面から評価すると、ジェンダーによってわずかに差があり興味深い。法的紛争に係わった男性の割合は女性に比べてわずかに高く、52%であった。法的紛争に係わった度合いの高さは従業員の年齢に従って上昇するが、60才を超えると法的な形を用いて争いを解決しようと考えるものはいない。若い従業員、特に28?37才の年齢層も法的な形での紛争調整手段をとることは比較的まれである。法的紛争に係わった人たちの職種別の分布を以下に挙げる。

  • ブルーカラー労働者(36%)
  • 管理部門従業員(26%)
  • 専門職(24%)
  • 管理職(14%)

法的紛争に係わった人たちを職種別に評価してみると、その3分の2(64%)が「ホワイトカラー」職に属していることは注目に値する。ハンガリーでは「ホワイトカラー」の割合は40%に過ぎないからである。

表3に、労働活動に関連する法的紛争に係わった人の年齢構成を示す。

表3 法的紛争に係わった従業員 (2002年)
従業員の年齢層
27歳未満 16
27~37歳 21
38~47歳 28
48~59歳 33
60歳以上 2
全体 100

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