8月の失業者数の401万人

※この記事は、旧・日本労働研究機構(JIL)が作成したものです。

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  • 国別労働トピック:2002年12月

2002年9月5日連邦雇用庁発表の労働市場統計によると、8月の全ドイツの失業者数は約401万人で、9月22日の総選挙直前の統計でも心理的大台の400万人を下回ることができず、依然として厳しい雇用状況が続いていることが明らかになった。

統計によると、全ドイツの失業者数は401万8000人で、前月比で2万9000人減少、前年同月比で22万9000人増加、失業率は9.6%で、前月比で0.1ポイントの低下だった。失業者数については、4年前の総選挙が行われた1998年の同期との比較で7万7000人の減少に過ぎなかった。

地域別では、西独地域の失業者数は263万1000人で、前月比で5000人減少、前年同月比で18万5000人増加、失業率は7.8%(前月と同じ)だった。東独地域では失業者数は138万7000人で、前月比で2万4000人減少、前年同月比で4万5000人増加、失業率は17.7%(前月比0.3ポイント低下)だった。

8月には東欧で150年振と言われる大洪水があり、東独地域のザクセン州でも甚大な被害を被り、このために労働市場政策上の処置として失業者が復旧作業に駆り出され、この分は雇用扱いとなって、季節調整値としても東独地域では失業者数の減少(7000人)があった。しかし、同地域の失業率は依然として17.7%という高い数字で、西独地域の2倍以上を記録しており、西独地域では季節調整値では失業者数が若干増加し(9000人)、厳しい状況が続いている。したがって、失業者数(原数値)については全体として前月比で若干の減少があったが、エコノミスト、有識者はもとより、ゲルスター連邦雇用庁理事長前の長官にあたる)も、労働市場の改善傾向は未だに見えないとしており、同理事長は市場の改善傾向が見られるのは早くて年末以降になるとしている。

このような労働市場の低迷の主な原因について、エコノミストの中にはドイツの経済成長の弱さを挙げるものがいるが、6大経済研究所の一つであるミュンヘンのIfo研究所のハンツ・ヴェルナー・ズィン所長は、ドイツにおける賃金水準の高さ、なかんずく非熟練労働者の賃金水準の高さを主要原因に挙げている。同所長によると、控え目な賃金政策を採用することによって、ドイツ企業はもっと新規の雇用を創出するようになり、それによって経済成長も促進されることになる。このために同所長は、低迷する労働市場の改革のためには、まず産業別労働協約(賃金協約)の規制を緩和する等して、賃金制度をもっと弾力化することが是非とも必要であるとしている。また、それとともに同所長は、社会扶助と失業扶助を統合して、失業者がこれらの支給に甘んじないで、もっと低賃金の労働に従事するように刺激を与える改善策が緊急に必要になると述べている。

僅差で総選挙に勝利したとはいえ、第2次シュレーダー政権では大量失業の早急の改善が名実共に最優先課題となっており、今後の労働市場の動向が注目される。

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