最近のIT労働者と育成状況

※この記事は、旧・日本労働研究機構(JIL)が作成したものです。

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  • 国別労働トピック:2002年12月

中国のシリコンバレーと呼ばれる北京市中関村で働くIT技術者は、より良い待遇を求めて転職する傾向が強まってきた。その一方で、北京市政府、海淀区政府は、国務院の協力を得て、IT産業を更に発展させるために、高度なIT技術者の養成事業に力を入れ始めた。

1 概況

中関村IT業者協会の調査によると、2001年末現在で、中関村にはIT企業が4000あり、労働者17万人が働いている。ソフトウェア開発とシステム開発の企業が36%を占める。

17万人の労働者の約60%は北京市出身であるが、ソフトウェア開発やその他の高度な技術を要する分野の労働者では、他の都市からの優秀な技術者の転職という形が増加している。外国人技術者、香港・マカオからの技術者は、13.28%を占めている。

労働者の学歴は、職業高校・専門学校卒が45.87%で最も多く、次いで大学学部卒が44.75%を占めている。ただし、ソフトウェア開発とシステム開発だけを見ると、大学学部卒が54.21%を占めている。

労働者の学歴とその比率 (%)
学歴 全体に占める割合
職業高校・専門学校卒 45.87
大学学部卒 44.75
修士 8.35
博士 1.03

年齢構成を見てみると、労働者の平均年齢は28.8歳である。中間管理職の平均年齢は31.46歳、高級管理職は36.56歳である。

性別で見てみると、男性労働者が59%、女性労働者が41%を占め、両者の差は以外と小さいが、高級管理職では、男性管理職が83.3%を占めている。

2 賃金

今回の調査におけるIT技術者の賃金は以外と低い結果になっている。

労働者の賃金とその比率 (%)
賃金 全体に占める割合
1000元以下 12.98
1001元から2000元 32.57
2001元から3000元 24.43
3001元から5000元 20.43
5001元 9.59

ただし、ソフトウェア開発とシステム開発の技術者だけを見てみると、平均賃金は、3562元で、北京市の他の業種の労働者の平均賃金より高い。

職位別に見てみると、高級管理職の賃金は、かなり高額であるが、上海市900と比較すると低い。

職位別賃金 (元)
  北京市 上海市
一般労働者 2477.93 2250
中級管理職 3768.69 3917
高級管理職 5723.31 7666

(北京市は2001年6月30日現在、上海市は、2000年1月現在)

企業自身の存続のため、あるいは労働者の賃金向上にとっても、技術力の向上が重要な課題となっている。中関村のIT企業が、2001年の上半期、労働者の技術向上のために支出した平均費用は、42,773元である。これは、北京市政府の指導である「賃金総額の1.5%を技術訓練に」という指導水準より高い。

3 労働者の移動

現在、中関村のIT企業が直面している問題は、労働者の流出問題である。労働者は、主として3つの方面に流出している。

  1. 上海市(経済が北京市より発展し、IT技術者の待遇がよいため)
  2. 海外(賃金水準が非常に高いため)
  3. 国内の他の企業(中関村地域より企業間・技術者間の競争が激しくないため)

4 IT技術者養成専門学校の増設

北京市政府、海淀区政府は、将来、中関村のIT企業が技術者不足に陥ることを恐れ、人材育成を強化し始めた。その1つが、中関村から近い北京航空航天大学における「安博ソフトウェア工程学院」の創設である。ソフトウェア関連の人材を大量養成することに重点がおかれ、教育部、国務院学位事務室、ソフトウェア関連企業の援助を受けて創設された(注1)

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