ボーイング社の最大労組スト回避

※この記事は、旧・日本労働研究機構(JIL)が作成したものです。

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  • 国別労働トピック:2002年12月

全米機械工・航空宇宙労組(IAM)に属するボーイング社の機械工2万5000人は、同社に雇用保証などを求めていたが、2002年9月13日に、会社側が提示した3年協約について投票を行った。会社側の提案への反対票は62%で過半数に達し、61%がスト実施に賛成した。しかし、労組規則で、スト実施のためには66%がストに賛成している必要があり、この水準に満たなかったため、協約が承認された。

投票を行ったのはワシントン州、オレゴン州、カンザス州の民間航空機製造部門の機械工で、前協約は2002年8月31日で終了していた。新協約では、(1)8%の協約締結時一時金、(2)2003年に2%、2004年に2.5%の賃上げ、(3)年金給付を3年目までに20%増額、医療給付の改善を定めている。労組は労使交渉で、雇用保証、年金給付の引き上げ(140%増)、医療保険の改善を要求し、労使双方の主張は隔たったままであった。労組代表は、これらの主張を受け入れなければストをすると述べ、組合員に協約への反対票を投じるように呼びかけていたが、航空業界からの注文が落ち込んでいる中でストをした場合、同社は最終的には航空機生産を中止し、何千人もの他の従業員を解雇する可能性があると警告していた。そのため、これまでに生産縮小や3万人の人員削減を行った同社に対し、ストを躊躇する組合員が多かった。

労組は、新協約を承認したことで、いくつかの譲歩をすることになった。雇用保証については、生産量と雇用レベルを関連づけて欲しいという労組の要求は認められなかった。また、ボーイング社は、労組による官僚的な承認を受けずに、外部の業者から部品の納入を受けることができることになった。この変更だけで何百人もの組合員の職が不要になる可能性があるが、同社は、この場合には解雇でなく、配転や降格で対応するとしている。同社は、労働者の先任権によらず、ワークティーム・リーダーを選ぶ権利も獲得した。年金給付についても小幅な引き上げにとどまった。

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