2002年上半期の雇用と労働所得

※この記事は、旧・日本労働研究機構(JIL)が作成したものです。

ベトナムの記事一覧

  • 国別労働トピック:2002年11月

ベトナム労働総同盟(VGCL)によれば、国有企業の労働者の労働環境は、最近、かなり改善されてきている。このことは、体力的に負担の大きい職場や、健康に有害な職場について特にあてはまる。しかし、この点で大部分の企業は、国が定めた基準を満たしていない。熱、埃、湿度、騒音などが基準値を超えており、労働災害や死亡事故が増えつつある。 労働・傷病兵・社会問題省(MoLISA)の推計によれば、2002年上半期には、60万人の労働者が新たに職に就いた。ホーチミン市、バーリア-ブンタウ省など多くの地方では、雇用水準が維持された。しかし、その他の地域では、繊維、皮革、木工、水産加工、建設などに対する需要が安定しないため、失業や不完全就業(注1)が生じている。

2002年上半期に海外に派遣された労働者の数は推計2万人で、年間計画の約50%である。以前から多くの労働者が派遣されている日本、台湾に加え、中東、米国、東南アジア(特にマレーシア)に派遣される労働者が増えている。

失業率は、まだ高い水準にある。都市部における失業率は、2000年に7.1%であったが、2002年上半期には6.3%である。ベトナム労働総同盟(VGCL)の報告によれば、国有企業には約41万人の余剰労働者がおり、うち10万人が長い間、仕事を待っている。国有企業で特に余剰労働者の比率が高い産業は、石炭、建設、鉄鋼、工業、運輸の各産業である。

社会保障と医療保険

労働法で社会保障制度加入が義務づけられている労働者は、3カ月を越える期間の有期契約、または期間に定めのない契約を結んでいる労働者である。4000万人以上の労働力人口のうち560万人に社会保障制度加入が義務づけられ、そのうち410万人が実際に保険料を支払っている。国有企業部門では、大部分の企業が労働者の医療保険料を負担している。一方、民間企業や外国投資企業では、医療保険へ拠出する会社は、まだ多くない。

所得と給与

国有企業の労働者は、他の部門の労働者よりも、しばしば安定した所得を得ている。国有企業部門の中でも、行政府の公務員よりもビジネス・生産部門の労働者の方が高い所得を得ていることが多い。さらに国有企業部門の中で、中央政府管轄の企業の方が、地方政府管轄の企業よりも、従業員の平均所得が高い。VGCLによれば、2002年上半期に各企業の従業員の平均所得は、中央政府管轄の国有企業で月80万ドン~200万ドン、地方政府管轄の国有企業で月40万ドン~100万ドン、民間企業では月32万ドン~75万ドンに多く分布している。

外国投資企業の労働者は通常、高い所得を得ているが労働強度も高い。保険、ボーナス、正規従業員としての雇用、時間外労働時間などについて、労使紛争やストが起きており、法改正などが必要になっている。

消費者物価指数は、過去2,3年は僅かに上昇傾向にある。98~99年には0.1%だけ上昇、99~2000年に0.6%低下、2000~2001年に0.8%上昇した。2002年5月の同指数は、前年同期比で4.2%上昇、2001年12月に比べ2.8%上昇した。したがって、労働者の購買力は低くなっている。2001年1月以来、国有企業の最低賃金は月21万ドンに引き上げられたが、教育費、医療費、社会保障、医療保険などの出費がかさむため、労働者にとって不十分な所得であることに変わりない。

関連情報