週35時間制の見直し:時間外労働枠の拡大とSMICの一本化

※この記事は、旧・日本労働研究機構(JIL)が作成したものです。

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  • 国別労働トピック:2002年11月

週35時間制の弾力化と最低賃金(SMIC)の調整に対する政府の方針が決定した。数週間にわたる公式と非公式の協議を重ねた後、フィヨン社会問題・労働・連帯相は9月6日に、全国団体交渉委員会のために集まった使用者団体と労働団体へ、賃金・労働時間・雇用開発に関する法案を提示した。多くの規定が2003年7月1日に発効することになるこの法案は9月18日に閣議に提出されて、10月2日から国民議会で審議される。デクレによって、年間の時間外労働枠は現行の130時間から180時間へ拡大され、労働者は「オブリ法」以前と同様に週に39時間を働くことができるようになる。また、単一SMICへの復帰が2005年7月1日に実現される。労働時間法制を緩和させるために圧力をかけてきた使用者側の意向が強く反映されることになるが、社会問題省の調査によると、約6割の労働者が時短を支持しているという。

SMICの迅速な調整、労働コストの抑制を目的とする社会保険料の引き下げ幅の拡大、我が国の経済と労働者の要求に応えることを可能にする週35時間制の弾力化。フィヨン氏は、「これが政府提案の3つの柱である」と述べ、労使からの批判に先手を打った。フィヨン氏によれば、この提案はほとんどの組合関係者が考えているような「後ろ向きの回帰」ではなく、「厳格すぎる法律の教条主義に対応する実践主義的な前進なのだ」と言う。

また、労使当事者の指摘や提案を勘案するために努力したとのコメントも出されたが、企業の深夜労働への依存を容易にするとして組合関係者の批判を浴びたいくつかの規定が撤回された一方、フランス企業運動(MEDEF)のセリエール会長がしきりに要求した180時間の時間外労働枠に関するデクレを、おそらくは法律の採決の日に、官報に発表させることに同意するなど、使用者側と労働側の要求の間で一種の均衡点を探ろうと試みた跡が窺われる。

労働者は週39時間の労働が可能になる

大多数が週35時間制に移行した労働者の組合にとっても、デクレによって企業のために新たな柔軟性を手に入れる目的で政府に強い圧力をかけた使用者にとっても、時間外労働枠は重要な問題である。フィヨン氏は損も得も折半にして折り合いをつけようとした。すなわち、時間外労働枠を180時間に拡大するデクレの発布を受け入れる一方で、これを時限的なものにし、最終的な決着は各部門の労使交渉に委ねることになった。

中小企業のための補償休日の限度の修正など、いくつかの規定がこれらの企業の週35時間制の状況を変更することになる。フィヨン氏は、「時間外労働枠の水準と報酬の条件を労使当事者に委ねることによって柔軟性の意図が示されている」とし、「法的な権利と協約の規範との間にいわゆる政治的・文化的な均衡の回復を促そうというのが我々の意図である」と述べた。

単一SMICは2005年7月1日

2000年1月19日の法律(いわゆる、「第2オブリ法」)が、「最も低い賃金の場合、週35時間制が所得の減少を引き起こしてはならない」と定めたことにより、6種類のSMICが併存することになった。フィヨン氏はジョスパン政府も頭を痛めていたこの状況から抜け出したいと考え、SMICの一本化と月額保障の制度を設置する。2005年7月1日に予定されている単一SMICへの復帰は、週35時間制の労働者が週39時間制の労働者と同一の賃金を得るために定められていた新たな月額保障を凍結することによって実現される。3年間の一連の引き上げは、月額保障全体を2002年7月の水準に合わせることができなければならない。インフレを除き、時間あたりのSMICは3年間で11.4%上昇する。MEDEFはこれが企業と非熟練労働者の雇用に有害だと見ている。

追加的な60億ユーロが社会保険料の引き下げに充当される

フィヨン氏は、最低賃金にかかる社会保険料の大幅な軽減を定め、ジュペ元首相とジョスパン前首相が決定した軽減措置を段階的に融合させる。2003年7月1日から新たな軽減が段階的に実施される。SMICの水準で最大となる(賃金総額の26%)この措置はSMICの1.7倍までのすべての賃金を対象とする。フィヨン氏は、「2006年までに国が60億ユーロ程度」のコストを社会保障制度へ補填することを約束した。社会保険料の引き下げはすべての企業に適用され、労働時間の短縮とは切り離される。MEDEFは社会保険料の引き下げによって完全には均衡しない最低賃金の引き上げをもたらすことになる政府の措置を、厳しく批判した。

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