2つのEECC調査、ゼロックス社における人種差別を裏付ける

※この記事は、旧・日本労働研究機構(JIL)が作成したものです。

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  • 国別労働トピック:2002年11月

雇用機会均等委員会(EEOC)は、ゼロックス社のシンシナティ施設で働くアフリカ系アメリカ人が、人種的に敵対的な職場環境に置かれていたとする調査結果を発表した。EEOCは、この調査結果を6月末に得ていたが、これまでは公表されていなかった。

EEOCは、証人や証拠書類に基づき、黒人従業員が人種に関する中傷を受け、首つりをしている黒人の人形を目の前に展示され、白人よりも頻繁に懲戒を受けていたなどとしている。調査は、黒人従業員が集団として差別されていたと結論したほか、90年代末から今までの期間に、4人のゼロックス従業員が提訴している訴訟についてEEOCは支持を表明した。この4人は、2~3週間後に提訴が予定されている集団代表訴訟で中心的な役割をすると考えられる。4人の従業員の弁護士は、EEOCの調査結果が、今後の訴訟における原告の主張の信憑性を高め、裁判でEEOC職員が証言することもありうると語っている。

一方、ゼロックス社スポークスマンのビル・マッキー氏は、内部調査では人種差別の証拠は認められず、同社が勝訴する自信があると語っている。さらに同氏は、EEOCの見解には異論があるが、問題を解決するためにEEOCに喜んで協力すると述べている。

黒人従業員の主張によると、シンシナティでは、ゼロックス社が当地の業務縮小にあたり、黒人従業員が不釣り合いなほど多く解雇され、昇進を認められず、白人従業員よりも高率の賃金カットを経験していた。

ゼロックス社では全国で何百人もの黒人従業員が、人種差別にあったと主張しており、そのほとんどの弁護は、モレリ&ブラウン法律事務所が担当している。EEOCの調査結果は、これらの黒人従業員の主張に対し、中立な機関が与えた最初の補強証拠(他の証拠の説明力や信用性を強めるために提出される証拠、または同一事実を裏づける別の証拠)となった。EEOCは、人種、宗教、年齢、障害などによる雇用上の差別があったと判断した場合、被害者の申し立てに基づき調査し、自主的な解決を促す。調停などで満足な結果を得られない場合には、自ら訴訟を提起する権限もある。ただしEEOCは使用者に対して救済命令を出すことはできず、この権限は裁判所にある。

EEOCは年に約8万件の申し立てを受け、その60%は受け付けず、18%は証人との接触ができないなどの行政上の理由で取り扱わない。残りの22%の大部分は調停などの手段で問題解決するが、この22%に含まれる、10%についてEEOCは差別があったとの確証を得ている。

黒人販売職に対する人種差別

15人のゼロックス社黒人販売職が売り上げや歩合の低い顧客に割り当てられていたと主張している件で、EEOCのスペンサー・H・ルイスJr. EEOCニューヨーク事務所長は2002年8月2日、証言や証拠書類に基づき、これらの主張を支持すると発表した。15人の黒人販売職のうちの5人がニューヨーク、ブルックリンの連邦地裁で当件について係争中で、EEOCの決定は、原告の黒人従業員に有利な材料になると考えられる。この5人を弁護している弁護士は、EEOCの決定により、訴訟が集団代表訴訟として認定される可能性が高くなったと述べている。もしも集団代表訴訟で従業員が勝訴すれば、1997年以来、ゼロックス社で働いている全ての黒人販売職従業員が損害賠償を受け取る可能性がある。

この件では、アトランタ、ロサンゼルス、ヒューストン、ニューヨークで働いている黒人販売職従業員は、白人従業員がより高い売上を見込める顧客を与えられていると主張している。そのうちの一人は、ゼロックス社のサービスに満足していない会社や白人従業員が困難を感じていた会社に黒人従業員がしばしば割り当てられていたと語っている。

ゼロックス社は、EEOCとの「包括的な対話」を行っていない段階なので、EEOCの調査結果に驚き、失望していると述べた上で、内部調査では黒人従業員の主張に根拠はないとされたが、EEOCとともに問題の解決にあたると発表している。

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