ハンガリー/賃金、雇用及び失業についての最新統計

※この記事は、旧・日本労働研究機構(JIL)が作成したものです。

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  • 国別労働トピック:2002年10月

ハンガリー中央統計局の最新統計によれば、今年の最初の4カ月において、実質月額賃金は11%増加した。名目平均月額賃金は、11万2400フォリント(1円=2フォリント)であった。賃金が最も高いのは金融部門で、最も低いのは繊維、衣料及び革製品製造部門であった。

賃金と雇用の概観

2002年1月から4月までに、前年同期比で名目平均総賃金は18.2%増、平均純賃金は17.9%増、実質平均賃金は6.2%のインフレーションの中で11%増を記録した。

上記の中央統計局の発表によれば、2002年1月-4月期において、5人以上を雇用する企業及び公共機関で270万人が雇用され、前年同期とほぼ同じであった。

当年の最初の4カ月において、フルタイム従業員の平均総賃金は、前年に比べ18.2%増加した。いわゆる「競争部門」の場合では、賃金上昇率は14.5%であり、「公共部門」では27.7%であった。公共部門での賃金が大きく増加したのは、前年に始まった中央での賃金引き上げと、2002年の賃金増による。

当年の最初の3カ月における実質月額賃金は、前年に比べ11.8%増加した。フルタイム従業員の名目平均賃金は、2001年第1四半期に比べ19.4%、平均純賃金では18.7%増加した。

2002年1月から4月までに、前年に比べ実質平均賃金は4.9%増、名目平均総賃金は17.3%増、平均純賃金は15.7%増であった。

当年の最初の4カ月において、フルタイム従業員の平均名目賃金は112,400フォリントであった。この中で、ブルーカラーの平均名目賃金は79,400フォリント、ホワイトカラーの平均名目賃金は一段と多く153,700フォリントであった。

2002年1月から4月までの最高賃金は、金融部門で支払われ、228,300フォリントの平均賃金であった。もっとも賃金が低かったのは、衣料(繊維)及び革類製造部門で、平均月額は66,500フォリントであった。当年の最初の4カ月において、国内経済における平均月額賃金は117,000フォリントで、前年より17.5%増加した。

表1は、2002年1月から4月までの国民経済における雇用及び賃金をまとめている。

表1 雇用及び賃金:2002年1-4月
部門 雇用総数 フルタイム従業員の月額平均賃金
千人 前年=100 総賃金 純賃金
フォリント/月 前年=100 フォリント/月 前年=100
国民経済 2,705 99.6 112,356 118.2 71,320 117.9
競争部門 1876.2 98.9 109.490 114.5 69,794 114.9
公共部門 784.7 100.6 120,162 127.7 75,461 125.5

出典:国家統計局、ブダペスト、2002

2002年の最低賃金の増加は、小企業所有者に大きな負担

2002年1月から、最低賃金レベルは50,000フォリント/月へと上昇し、ハンガリーの小企業にとって大きな困難となっている。この状況の深刻さを理解するためには、ハンガリー企業の規模構造を知る必要がある。表2は、ハンガリー経済における企業の規模分類をまとめている。

表2 ハンガリー企業の規模構造(2001)
企業規模 企業数 割合(%)
極小企業(10人未満) 788,664 96.4
小企業(10-49人) 23,701 2.9
中企業(50-249人) 4,821 0.6
大企業(250人以上) 1,105 0.1
合計 818,291 100.0

出典:Terez Laky(2001)、労働市場報告、ブダペスト:国家雇用サービス局、P.14(ハンガリー語)

表2を見ると、いわゆる極小企業は、ハンガリー企業の中で90%以上を占め、圧倒的であることが明らかである。彼らは、2002年1月から最低賃金義務(50,000フォリント)を支払うのに相当な困難を抱えている。最低賃金の上昇による悪影響により、30万人が雇用されている低賃金部門(例えば、繊維、衣料産業)では、その重要部分の雇用が打ち切りの危険にさらされている。(註:この部門は、年10億フォリントの輸出を行っている。)

1年前国の最低賃金を同様に4万フォリントへ引き上げた前の政府は、公式最低賃金を援助なしには保証できない企業に対し150億フォリントの補償を行うことを約束した。今年、極小企業及び小企業の所有者は、150億フォリントでなく180億フォリントを必要としている。新政府は、2002年6月24日から、従業員20人以下の小企業の所有者に対し、この補償の支払いを始める。この補償は、最低賃金増により増加した費用の20%だけをカバーするに過ぎない。小企業の所有者の多くは、政府の補助金にを要請する準備をしていない。

失業:東部ハンガリーで減少する雇用

ハンガリーの登録失業者数を検討すると、20世紀最後の10年に慢性的な高水準の失業を経験した東部ハンガリーにおいても状況はまだましである。このように比較的労働市場が好調ではあるにしろ、郡の失業水準は19%であり、相対的な改善を見たに過ぎない。さらに、郡の労働事務所に登録されていない多くの人々がいる。中央統計局の労働市場報告に示された主な傾向は、経済実績の改善にもかかわらず、雇用水準が低下しているということである。

ハンガリーでもっとも低調な労働市場の一つが、東部ハンガリーのBorsod Abauj Zemplen郡である。この郡において、失業水準が最も低かったのが1991年秋であった。2001年2月、登録失業者数は6万人であったが、2001年11月末には49,000人へと減少し、失業率は郡の労働事務所の統計によれば17.7%へと減少した。

Borsod Abauj Zemplen郡における労働市場状況の統計データは改善を示しているが、労働市場における自分の地位が改善されたと認識している人は少ない。この矛盾は、次の要因によるものだろう。

  • 登録失業者数の減少は、新しい仕事を見つけた失業者数によるものである。
  • 失業補助を受ける資格がなく、地域労働事務所に失業者として登録されていない失業者たち
  • 積極的労働市場プログラム(例えば、訓練、再訓練、公共事業)に参加し、労働事務所に失業者として登録されていない人々

最近発行された中央統計局の報告によれば、2001年の末において、4,242人を超える人々が、積極的労働市場プログラムに参加した。

ハンガリーでもっとも労働市場記録が悪かったBorsod Abauj Zemplen郡では、2001年、41.5万人を超える人々の労働市場における地位が、積極的労働市場プログラムによって改善された。積極的労働市場プログラムにおいて、9,600人が訓練及び再訓練プログラムに参加し、15,000人の労働市場における問題が、様々な公的資金による事業への参加によって一時的に解決された。

登録失業者数の減少は、Borsod Abauj Zemplen郡における労働市場の状況の改善を直ちに示すものではない。例えば、4人以上を雇用する企業において、2000年に比べ雇用数は1.5%減少した。競争部門において、雇用は1.8%減少し、公共部門において雇用は1.4%減少した。経済の好転は、雇用(労働市場)状況を改善していない。例えば、産業は2001年に業績を8.3%増加させたが、雇用水準は3.1%減少した。特筆すべきことは、ハンガリー経済においてもっとも労働市場状況が悪いこの郡において、就労人口(15歳から74歳までの人口)の割合が、全国平均の53.5%に比べ46.6%に過ぎないということである。表3は、ハンガリー経済における地域別失業率をまとめている。

表3 ハンガリーにおける地域別失業率(%)
地域(EU分類によるNUTSⅡ地域) 2001年1-3月 2002年1-3月
中央ハンガリー 4.5 4.0
中央トランスダニュービアン地域 4.3 4.9
西部ハンガリー 4.6 4.2
南部ハンガリー 7.6 8.2
北部ハンガリー 9.4 8.2
北部平野 9.4 8.6
南部平野 5.5 6.2

出典:国家統計局、ブダペスト、2002

結論に代えて、以下のように要約することができる。我が国の経済が好調だったため、もっとも労働市場状況が劣悪な地域でも失業は改善した。しかしこの改善は一時的であり、活動水準は全国平均をまだ下回っている。賃金については、金融部門がもっとも高い給与を支払っており、賃金が最も低かったのは、衣料、繊維及び革製造部門であった。各種企業の中で、極小企業の所有者は、ハンガリーの義務的最低賃金の支払いにより、相当な困難に直面している。政府による最低賃金補助が必要の20%のみしか満たしていないことから、彼らの多くが政府補助を申請していない。

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