ダイムラー・クライスラー社、世界経営協議会を設置

※この記事は、旧・日本労働研究機構(JIL)が作成したものです。

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  • 国別労働トピック:2002年10月

「雇用のための同盟」第8回会談はシュレーダー首相の主催で1月25日に開催されたが、特に賃金政策をテーマに取り上げるか否かについての争いが最後まで解決されず、結局労使の主張が平行線をたどって物別れに終わった。

「雇用のための同盟」の会談は、2001年5月の第7回会談以降、超過労働や賃金政策をめぐる労使の食い違いが表面化し、2001年12月のクリスマス前に予定された第8回会談も、労組の賃上げ要求決定過程と重なり、また、テーマを巡る争いから成果を期待できないと思惑もあって引き伸ばされた。しかしIGメタルの賃上げ要求決定などを受けて(本誌2002年3月号Ⅰ参照)、本格的な賃金協約交渉の前に会談を開催することで合意し、2002年1月17日、急きょ1月25日に第8回会談を開くことが決まった。

開催が決定した後、使用者側は、労働市場の改善と経済の活性化のためにあらゆる話し合いに応じ、具体的成果を目指すことを表明したが、1月18日に4大使用者団体がシュレーダー首相に提出していた、会談後の共同声明発表に条件を付する要望書に対して、労組側が厳しく反発した。

要望書は、使用者側からの従来よりもかなり強硬な態度を表明するもので、次のような内容が含まれていた。

  • 賃金協約の事業所協定に対する優先を変更する。
  • 2002年度の賃金協約交渉は2002年度のモデルに従い、あらかじめ共同声明を発表し、賃上げは生産性の向上の範囲で0.9~1.8%の控え目なものにし、一部は企業業績と結びつけ、また事業所による差別化も認める。
  • 派遣労働や期限付き雇用を拡大する。
  • 僅少就業の上限を月額325ユーロ(630マルク)から600ユーロに引き上げ、中期的には600ユーロ以上の賃金に疾病保険と介護保険の保険料支払義務を課する。
  • 法人税をさらに引き下げ、税制を単純化する。
  • 年金支給年齢を引き上げる。
  • 社会保障制度の改革で自己責任を強化する。

これに対して労組側は、このような強硬姿勢で要求を羅列することは、使用者側が会談の成果を求めることにそもそも初めから関心がないからだと、厳しく反発した。

最後まで揉めたのは、会談で賃金政策をテーマとして取り上げるか否かだったが、2000年度と同様、「雇用のための同盟」の共同声明とその後の円滑な労使交渉を望むシュレーダー首相は、会談の前日の24日、急きょフント使用者連盟(BDA)会長とシュルテ労働総同盟(DGB)会長との三者会談を行い、労使の歩み寄りを図った。だが、あくまで賃金政策の取りあげを拒絶するシュルテ会長(協約自治の原則が背後にある)とこれを共同声明発表の前提とするフント会長の溝は埋まらなかった。

シュレーダー首相の仲介工作の失敗を受けた翌25日の「雇用のための同盟」第8回会談では、予想どおり賃金政策の基本線の議論はなされず、共同声明も発表されず、会談は全くの物別れに終わり、将来の「雇用のための同盟」の存在意義を疑問視する声も、特に使用者側から上がっている。フント会長は今回の会談の敗北者はドイツ経済だと述べ、コブフスキー産業連盟(BDI)会長は、会談の失敗で今年度の賃金協約交渉の行方が不確定になり、企業は投資を差し控えるから、景気の回復も遅れることになると、労働側の非協的な態度を批判している。

これに対して労働側は、1月24日に公式にDGB会長選挙への不出馬を発表したシュルテ会長が、使用者側の態度は受け入れがたいとして、将来の「雇用のための同盟」の在り方に疑問を呈したほか、通常は現実・柔軟路線で知られるシュモルト化学労組(IG BCE)委員長も、使用者側の賃金政策に対する強硬姿勢は従来の成果を台なしにすると批判し、この姿勢が続くならば、今年の賃金協約交渉でストライキの可能性も否定し得ないと述べている。もっとも同委員長は、使用者側と労組は非常に険悪な状態におかれたとしながらも、「雇用のための同盟」に代わる選択肢はないと述べている。

このような結果に終わった「雇用のための同盟」第8回会談を受けて、2月から本格的に始まる今年の賃金協約交渉の展開は、波乱が予想されるが、秋の連邦議会選挙への影響も含めて、今後の行方が注目される。

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